第45話 迷いの魔樹③
◇ ◇ ◇
――新しい朝が来ました。
おはようございます……。
本日も爽やかな晴天ですね、気持ちいい!
そういえば、この世界に来てから八日経ったけど、一度も雨に降られてないなぁ。
北の森の中ではまだ、小さな沢ぐらいしか見つけてないんだけど、あれだけ森林が繁殖しているってことはどこかに水源がありそう。マッピングしていけば、そのうち見つかるかな?
昨日は ようやく念願の革鎧を手に入れた。
これで生存率もあがるし、とっても嬉しくて喜んだのだけど、残金は心細いことになっている……。
……どうしてこんなにお金が無くなるのが早いんだろ?
必要なものしか買ってないのに、全然贅沢していないのに~!
……なんかこの世界に来てからずっとお金がない、お金がないって言ってる気がする。
ふふふっ、でもいいんだ。
今の私にはお金の余裕はなくとも心の余裕があるっ。
なんたってしばらくは、迷いの魔樹の討伐と虫根コブ草の採取という、二件の高額依頼(私にとってはだけど)が続くからね! いつまであるか分からないけど、稼げる時に稼がせてもらいますよ!
じゃあ、今日も張り切って北の森へ行きますか!
いつもの時間に北門を出ると、今回はすぐに街道を離れて森の中へと入って行く。
ここら辺には町近くという事もあり、冒険者以外にも木こりさんや猟師さんが多く活動している。
そのため、『索敵』には開門直後という時間帯にもかかわらず、何人かが固まって森の中にいるのが表示されている。
この数だと、木こりギルドの専属護衛をしている冒険者さん達も一緒にいるんだろうなぁ。
初めて入るけど、やはり人の手が入った森という感じで樹が適度に間引きされ、下草が刈られて明るく歩きやすい。
ハイキングコースみたいで初心者でも安全に採取出来そうだった。
ここなら魔物もよく間引かれてるし、リノを連れてきて一緒に魔物討伐ができるかもしれないと思ってたんだけど……。
さすがに魔物が少な過ぎる。全然、出会わない。まずは効率無視で安全性を重視するなら、ここでもいいかなぁ?
さて、エドさんによれば、どうやらこの辺でも迷いの魔樹の若木が歩いているのを見た人がいるとのこと。
今年はまだ討伐数も例年並みとのことだったので、警戒レベルは上がっていないけどここは町から近いからね。
他にも見かけたら討伐するか、無理なら報告して欲しいと言われているんだ。
なので来てみたんだけど、こんなにたくさん地の利を知り尽くした人達がいるんじゃ、私いるのって感じじゃない?
若木のうちに見つけられたら、幻術も弱いから割りと討伐しやすいそうだし……。
ただ、やはり成木は見つけるのは難航しているらしい。
……と言うことで、私はまず、そっちを探すとしますかっ。
一応、できるだけ見回る場所を増やしていく方がいいと思い、行き帰りは今日も別々のルートを通るつもり。
まだこの森に入って数日だけど、外周付近を『マップ作成』スキルを使ってマッピングしていっている。広いから全然進んでないけど。
迷いの魔樹も、森の奥に行けば行くほど強い個体になり幻術も強力になるらしい。
幻術耐性のあるエルフの私でも危険かもしれないから、『マップ作成』は常に使用して間違って奥もに行かないようにしないと。
他にも森の奥には、厄介な魔樹が生息しているそうで、知らず知らずの内に誘い込まれる事もあるみたいだから気を付けないといけない。
『マップ作成』スキルがあって、本当によかったよ。森の中にいると、木が生い茂って太陽が見えないことが多いし、方向感覚が狂うからさっ。
命大事にっ、だから油断せず行くよ!
地上からばかりでなく、時々、樹に登っては遠くまで『索敵』で見渡し、近くにいないか探していく。
幻術スキルを使用している状態の迷いの魔樹は、索敵スキルのレベルが低い私だと直接視界に入れないとどこにいるか分からないという欠点があるので、簡単には見つからない。
本当、ここら辺に出てくる魔物が魔法を使えない種類ばかりで助かったよ。そうじゃなかったらと思うと恐ろしい。『隠密』とか使われてたら分からないもん。
『視覚強化』を取るためにも広い範囲を一度に見るのは訓練になるし、同時に『鑑定』も鍛えられて効率的だからいいんだけど。
まあ、『鑑定』もまだ、そんな遠くの方までは出来ないけどさ。努力は裏切らないって言ってたから今は練習するのみ、だよね。
――あっ。
あれ、そうじゃない?
あんな近くにいるよっ。見つけた、成木だね!
すぐそこだし、これなら行っても大丈夫そう。
気配を消しながらゆっくり進んでいくと……。
――うん?
なんかこれ、魔物も何体かいる?
この『索敵』の感じはゴブリンっぽいな? 六体ぐらいが同じところをぐるぐる回っている……ような?
ってことは迷いの樹の幻術にもう捕らわれてるのかっ。
徐々に接近して行って、ちょっと離れた所からこっそりと様子を伺う。
相当幻術が効いているのか、ゴブリン達は従順に迷いの魔樹の方へとフラフラしながら近寄っていっている。
――根元まで近づいた、その時……。
樹全体が軋むような音がして、地面が盛り上がり根っ子が蠢く!
土の中からウネウネと伸ばされた何本もの根は、触手のように不気味に連動して動く。
器用に操って近づく獲物に巻き付けると、しっかりと抱え込み引きずり寄せた!
あぁ……もう半数位が土中に飲み込まれて見えなくなっちゃってるよ……。
ううっ、捕食の瞬間を見ちゃった……グロいっ。
ああやって捕らえた獲物から、根っ子を使って即死しない程度に一気に魔力を吸い取り、弱らせてからゆっくりと自分の養分にするんだったよね……怖いってっ。
絶対あの根っこに触られないようにしなきゃ!
――さて、これはどっちを先に片付けるべきかな?
迷いの魔樹は今、ゴブリンに夢中でこちらに気付いていない……と思われる。今なら不意討ちが出来るチャンスだ。
よし、迷いの魔樹からにしようっ。不意打ちは得意中の得意だし!
一番威力のある火魔法で一気に倒す!
『
二連続で放つ! ナイスショット!
やった、両方とも命中したよ!
したけどちょっ、ゴブリンを放り投げてきたんですけど!?
そんなっ、嘘でしょ!?
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