気づいたら異世界ライフ、始まっちゃってました!?
飛鳥井 真理
第一章 辺境の町
第1話 ここはどこ? 私はだれ?
――視界の先に街道らしきものが、見えている。
少し遠いし、木々で遮られて見えにくいけど間違いないだろう。
でも、それ以外はというと……。
目の前には信じられないような光景が広がっていた。
いや、本当に、とっても信じたくない光景が……。
だってこの、一本の道以外、人工的に作られたものが一切なさそうな、とてつもなく圧倒的な大自然はいったい何事!?
いやはや、素晴らしく雄大な光景ですね~、ここはジャングルでしょうか……って違うっ。現実逃避してる場合じゃないっ。
でもなにこれ。なんなのこれっ。どうなってんの!?
あたり一面、見渡すかぎり自然
人っ子一人、いないんですけど!?
それに……って、あれ? ど、どうしよう!?
……言っていい?
たった今、こ、怖いことに気づいちゃったんですけど……。
ねぇ、私っていつから
……。
え、いやいやいやっ。待って嘘でしょ!?
ヤバいよ、今さっきだよ……ここにいるって気づいたの。
で、でもさ。それって、おかしくないですかね? こんなとこ、一人で歩いて来れるような場所じゃないでしょ……多分。
ていうかそもそも自分で来てないから、こんなとこ……覚えてないけど。
周囲には目印的なものは何もないし、よく分からないけど多分、ね。
それに、もっと最悪な事に気づいちゃったんですけど。
なんというかね、本当は気づきたくなかったんだけど……どうやら私、自分のこともよく分からなくなっているというかなんというか?
――ヤバい。突然、き、記憶喪失になっちゃったんだろうか。
ちゃんと考えようとしても、何故か無理なんだ。自分について思いだそうとすると、ふわふわと思考が逃げていくというかね……いや何が言いたいのか分からないと思うけど私だって何がなんだか分からなくて絶賛混乱中だからっ。
――いや本当どうすんの、これ。
あまりのことに唖然とする。
でも、このまま見知らぬ土地で無防備に突っ立ってるのだけは絶対に駄目だ。危険過ぎる。
しっかりしなきゃっ。考えろ、私。
とりあえずこの状況で呑気に混乱を極めてる場合じゃないよね。れ、冷静になれ!
まずはっと、
これ、必要だよね?
えっと、周りには誰もいなくて私は今、一人で、手には何も持ってなくて、周りにはなんにも落ちてない。
――よしっ、確認した。
い、いやまず、ここからやっとかないと、うん。
だって記憶が飛んでるし、何か重大な見落としとかあるといけないじゃない、ね!?
……つ、次行こ、次!
服装も見ておくか。今現在、唯一の持ち物といえるものだし。
それに気になってたんだ。この服、自分的には見慣れないというか、普段は着てないんじゃないかなと思って。
いつの間にこんなの着たんだろ……森の中にいたら溶け込んでしまいそうな色合いの、どことなくファンタジー仕様っぽいやつ。
シャツにベストにズボン、ブーツにフード付きの外套……必要最低限というか、めちゃくちゃシンプル。
見間違いようがないくらいに!
着た覚えはないけれども!
でも丈夫そうで着心地も悪くないからまぁ、うん。良しとしよう。
後はポケットの中身も調べておくか。何か有用なものが見つかるかも……見つかったらいいな。
実はさ、いっぱいあるんだよねポケット。何故かやたらとつける仕様みたいで特にベストには多い。
何か見つかりますように……と、ドキドキしながらあちこち全部探ってみたんだんだけど。
えっ、嘘……なんにも、入ってない。
念のためその場でジャンプしてみたりもしたけど、チャリンっとも言わなかったよっ。これだけあるから少しは期待したのに!
――結果。
カネなし、身分証なし、食糧なし水もなし。もちろん、武器とか地図とかサバイバル出来そうなものも……当然、ありませんよね?
……なんということでしょう。最悪の事態です。
本当に身一つで知らない場所にいるらしいよ……生きてけるのかこれ?
こんな所に置き去りにした奴、誰だか知らないけど文句を言ってやる。
ばかやろ~!
っておもいっきり叫びたいけれど、それは心の中だけにしておく。だって何がいるか分からない、未開の場所で大声なんか出したら怖いし!
――はぁ、はぁ……ふぅ。
ひとりでアワアワし過ぎて無駄に疲れた。状況的に体力温存しとかなきゃマズそうなのに……。
しかし真面目な話、これからどうすればいいんだろ、私。
ここが何処かも分からないのに、自分が誰かも何処へ帰ればいいのかも全く覚えてないとか……もうすでに詰んでるんじゃないでしょうか……手詰まり感が半端ないんですけど。
――ねぇ、本当にこれって現実……なの?
信じられない。頭、痛くなってきた……。
◇ ◇ ◇
――そう、確か、その時はちょっと変わった夢を見ていると思ったんだ。
気がついたら白い部屋というか何もない白い空間の中にいて、どこからか誰かの声だけが聞こえてきて……。
「皆にこれから行く世界に適応できるスキルを与える。好きなように選べ」と言われ、スキルポイントなるものを渡された。
なんでもその世界にはスキルというものがあるらしく、努力すればレベルが上がり、成長していくのが実感できるのだとか……何だその設定、ゲームっぽいな。
私に与えられたのは
……多いのか少ないのか分からない。けれど、この数字ってどこから出てきたんだろって思っていたらまた、誰かの声が聞こえた。これまでの人生経験値だそうです。ちなみにポイント数は皆違うとかも言われました……ソウデスカ。
ナゼ、コチラノカンガエテルコトガワカッタノカナ、コワイ。
――うん!?
皆? 今「みんな」って言った? 皆って何?
誰かいるの……ここに?
驚きの白さでなんにも見えないけど……自分の姿すら見えないんですけど!?
……。
…………。
………………。
シーンとしてるねこれね……無音だね……無言の圧力を感じちゃうよねこれはね。
……はよやれ、選べってことのようなので(たぶん)、天の声に従ってさっさと始めますか。
――では早速、スキルポイントを振っていこうと思います!
武術系、魔術系、生産系スキルの他、種族も選べるらしく目の前の白い画面にズラリと一覧表示されている。
この中から好きに選んでいいみたいだけど……結構多いな!? 目移りしちゃう。
う~ん、どうしよ?
どんな世界が舞台なのかの詳しい説明もないまま、いきなりこの膨大なスキルの中から自由に選べと言われても……どうやってポイントを振ってったらいいんだろ?
種族によって得意不得意も違うだろうし(分からないけどたぶん)、迫害されるかもしれないし(分からないけどたぶん)、生活様式もこの手のゲームや小説のように王道の中世ヨーロッパぐらいなのか、それとも超近未来なのかも不明だし……悩むなぁ。
あっ、でも『異世界言語』スキルっていうのがある!
ってことは自動翻訳されない系の世界なのか。じゃあこれは必須だね、絶対取らないと。見つけられてよかったぁ。言葉が通じないとか、初手で詰みそうだもんね。危ないあぶない。
……他にも重要なスキル、あるんだろうか。見逃しそうで怖いなぁ。次、どうしよう。
う~ん。スキル一覧をざっと斜め読みして見ると「剣と魔法の世界」なのは間違いなさそうなんだよね。でも、これだけだとヒントが少なすぎじゃないですか。他に、何か参考になりそうなスキルってないんですかね?
とか思っていたら、一番上に『異世界知識』と言うのがあった……。
あ、危ない。見落とすとこだった……結構目に付くところにあったのに今気づきました。異世界の知識かぁ、必要かも。
えっと、スキルポイントはいくつかな?
えっ随分、た、高くない?
種族を選ぶ以外は大体1、2ポイントで取れるのに何でこんな高く……。
――あっ、もしかしてこれ、重要なスキル……とか? 取ったほうがいいのかな……?
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