天神短編集
天神シズク
第3回 #匿名短編コンテスト・パートナー編
最後は彼女と僕の手で。
『
「ついにここまで辿り着いたな……。長い
グオングオンと大きな機械音が鳴り響いていた。巨大なタンクのような鉄の塊が目の前にある。黒いコートの
《
半永久的にエネルギーを放出し続けると言われている
「それもこれも、君がいてくれたからだよ。君の存在なしではここまで辿り着くことも……いや、生きていることすら叶わなかっただろう」
彼女はいつものように無言のままだ。
「……君と出会った頃を思い出すよ。一目惚れだった。僕の目には、君が輝いて見えた。どんな手を使ってでも、自分のモノにしたい。これまで生きてきて、初めてそう思った。そして、君は僕のモノになった」
僕は彼女を撫でた。大事に。大切に。優しく撫でた。
「いつだって一緒だった。寝るときも、食事のときも。お風呂は……流石に無理だったね。一緒に入りたかったけど」
僕は笑いながら彼女に話しかける。しかし、彼女は変わらずツンとした様子だ。
「他のにも浮気しちゃったこともあったけど、やっぱり君が一番しっくりきたよ」
機械音が一瞬止まり、プシューという音と共に煙が吐き出された。
「ゴホッ……ゴホッ……もう、臭いなぁ……」
左手を振り回し、煙をかき消す。視界が良好になると深呼吸をした。
「ふぅ……。ったく、僕の最後の任務だってのに、散々だな」
左手首に巻いてある腕時計型の端末がピピッと鳴った。音を止め、音の原因を確認する。
「……あと1時間だってさ」
『
だからこそ、ここまで来れた。そう思う。
僕が所属する『
遺伝子への情報書き込みには、膨大なエネルギーが必要とされてる。あらゆる処理端末を使っても、エネルギーの消費が早く、不可能とまで言われた遺伝子操作は、こいつの登場で一瞬にして解決された。
「《
右手に持った彼女を握りしめる。彼女の中には、《
照明がチカッと光り、警告音が鳴り響いた。
「ようやく気づいたのか。今更遅いっての……。さて、さっさと終わらせようか」
僕は彼女をタンクへと向けた。彼女の
「兄ちゃん、姉ちゃん。今までありがとう。僕の死が、無駄になりませんように……!」
僕は
「ありがとう」
彼女がそう言った気がした。僕は一瞬驚きながらも、軽く息を吐いて言った。
「愛してたぜ。マイパートナー」
『
《
世界中が静寂に包まれた。
これからまた、人類の歴史は動き出す。
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