第28話 冒険者登録
■ 鈴木真理雄。異世界に落っこちてきた。現在、異世界を探索中。
■ 〝あいつ〟無限炉の中で会った存在。真理雄に魔法を伝授した。
■ ネム。獣族の女の子、ものすごい美少女。白虎の特徴を持つ
■ ミルテア・大地母神ステルアの神官。ハーフエルフ。ものすごい巨乳。司祭様。
■ ロイド。森であったハンター。体格のいい重剣士
■ リリ。森であったハンター。微妙に露出のおおい魔法使い。
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第28話 冒険者登録
「えっと…壊滅…ですか…」
「はい…私たちのパーティー『百花繚乱』は森の奥、月光魔草を採取中にエルダーゴブリン率いる群れと遭遇、戦闘になり…生き残ったのは後衛の私とネムちゃんだけでした…」
茫然とするギルドの職員さんに対してミルテアさんがはっきりと事実をづける。
「えっ、えっと…ちょっと待ってください…い…いまギルドマスターを…」
職員の女性はバタバタと奥に引っ込んでいって、すぐに戻ってきて今度はミルテアさんの手を引いて奥に連れていってしまった。
「取りあえず報告はミルテアさんの任せましょう。マリオンさんの登録もしちゃわないとですし」
「ええ、お願いします」
状況がどう動くのか気にはなったが、これは事前に打ち合わせたことなので俺は登録に向かう。報告はミルテアさんに任せるということになっていたのだ。
まあ、俺は全くの部外者だしね。
ギルドの建物は外から見るとコンクリートのような見た目をしているのだが、内部は木造で温かみがある。カウンターで仕切られていてそこに受付があり職員さんが詰めている。職員は若い女性が多いが奥のスペースにはこわもてのおじさんもいる。
ここでも直接の接客(?)は若い女性で、後ろで実力派が控えているという構図は変わらないようだ。
デザインは素朴な温かさがあり、田舎という言葉とよく似合う。
カウンターの前は空きスペースで、忙しいときはきっとたくさんの冒険者が並んでいるのだろう。
その奥にはテーブルと椅子があり、簡単な喫茶スペースのようだ。
たぶんそこに空いている店でお茶やおちゃけや軽食は出るのだろう。
カウンターの受付は担当ごとに分かれていて、申請受付。クエスト受付。買い取り受付があるらしい。
ネムちゃんが説明してくれた。
カウンターの受付嬢の前には看板があってそう書いてあるのだが…読めない。
全く知らない字だ。
「仕方ありません。言葉は言霊の力で伝わりますけど、文字はそうではないですから…」
がーん!
そういうことか…
そういえばそんなことを聞いたような気がする。
そっか…文字と文章はちゃんと勉強しないとだめか…
その困難さに(語学は苦手だ)ちょっと青ざめているとネムちゃんは申請受付に進んでいって俺の冒険者登録をしたい旨を告げていた。
「初めまして、ターリの冒険者ギルドにようこそ」
受付の人がにっこり笑う。
獣族の人だ。
耳がとがっていて、頭に小さな角があって、しっぽがひゅんひゅん揺れている。
たぶん牛さんだ。
お約束というかなんというかおっぱいがすっごく大きい。
背が高くてメリハリがあるのですごく大きいという印象ではないのだが私の目はごまかせない。ミルテアさん並みの巨乳だ。
だからなんだといわれても困るんだが…
ああ、ちなみに美人のお姉さんという感じの人だよ。
「冒険者登録を物納でですね。ガモガモ三羽と始祖雉二羽…はい、大丈夫です。
鑑定書類はありますか?
あっ、これですね、ミルテア司祭の鑑定書ですね……はい、こちらも問題ありません」
以前書いてもらったものだが正式な書類になるのか…
「えっと、これで…大丈夫ですね…では血を一滴いただきます。あと冒険者証の完成まで少しお時間をいただきますので、少々お待ちください」
「あれ?」
「どうしました?」
「必要事項の記入とかないのかな?」
「あっ、それは大丈夫ですよ。鑑定書に書いてありますから」
「ああ、そうか。そういえばそうだった」
この安易な納得が取り返しのつかない、しかし割とどうでもいい事態を引き起こすのだが、どうでもいい事態なので割とどうでもよかったりする。
受付さんがギルドの説明をしますか? といってくれたがこれは丁重にお断りした。ネムちゃんが『自分がやるからいい』のだそうだ。
というわけで俺たちはテーブル席に移動してお茶を頼み。その間に冒険者の説明などを聞くことになる。
「まず冒険者ですけど段階があります。
クラスというんですけど、クラスは4段階。
一番下がCクラス。
これは冒険者になったばかりの者もCクラスですね。
Cクラスで実績を積み上げて一人前と認められたらAクラスになります」
んにゃ?
Cの次がA?
「Aクラスになると依頼の幅が広がります。
護衛依頼なんかはAクラスにならないと受けられない依頼です。
Aクラスになるための基準というのがありまして、魔物の討伐実績。依頼の達成数、達成率。あと仕事上のトラブルの有無などを勘案してギルドが認定します。
そのあと昇格試験というのもあって、合格すればAクラスです」
「結構大変そうだね」
「はい、でも討伐も含めて二、三年やっていればAクラスになるのは難しくないです」
ふむ、そんなものか。
「そしてAクラスで実績を積み上げ、一流と見つめられるとSクラスになります。Sクラスは自他ともに認める一流の冒険者です」
あっ、この並び方分かっちゃった。G、S、A、Cの並び順だ。たぶん。
「四つということはその上にGクラスがあるということかな?」
「はい、そうです。知ってました?
Gクラスは特に優れた功績のあった冒険者の称号で、普通は認定されません。
えっと…例えば国を救ったとか、そういう誰が見ても文句のつけようのない功績がないとだめですね。
確かこの国では今はドラゴンスレイヤーが一パーティー、Gクラスに認定されていたと…あとは数年前にあった魔物の大暴走から国を守ったということでお隣の国で一人…ですか」
まあ、ここまで行くと俺には関係ないかな。
「ということはネムちゃんは現在Aクラス?」
「いえ、まだCです。私もあと一年はかかるんじゃないでしょうか…信用は積み上げるのに時間がかかります」
なるほどよくわかりました。
ほかの説明としては魔石はすべてギルドで売却することが義務付けられている。
公共性が高く、自由な売買が認められていないからだそうだ。
ただ、いい魔石はギルドで競売なんかにかけてくれるらしい。
そのほかの素材の買取もギルドでやっていて、これらは例外なく三割が天引きされる。
そのうち半分がギルドへの上納金、残りの半分がその地域を統括する貴族への税金となる。
三割? 高い! というかもしれないが、このシステムのおかけで冒険者は国中、どこに行っても税金を取られないし、身分が証明されることになるし、どこであれギルドの施設を利用できるようになる。
昔の税金というのは通常で三割ぐらいだったはずだからそれを考えるとおかしくはないのかもしれない。
消費税とか酒税とか余計なものはないしね。
「あと、依頼には依頼ごとに、魔物にも一匹ごとに決められてポイントがありまして、依頼をこなしたり、魔物の魔石を納めていると自動的にポイントがたまります」
「ポイントをためるといいことがあったり?」
「はい、冒険者の資格は一年ごとに更新なのですけど、Cクラスは一五〇ポイントためると更新料が無料になります。
依頼は最低でも一ポイントはついていますから、一番安いやつでも二日にいっぺんぐらいこなしていればクリアできます。
まじめに取り組めばそのぐらいは行けます」
なるほど、普通ならクリアできるラインということなのかな?
逆に不真面目なやつはクリアできないと…
「あと、冒険者は町の危機に際して国に協力する義務があります。
えっと、例えばさっき言った魔物が大挙して襲ってきたとか、ドラゴンが襲ってきたとかですね。そういう時は領主や代官が『非常事態宣言』を出します。
非常事態宣言が出されると冒険者はギルドマスターの指揮のもと防衛に協力することになるんです」
ほかにも商業ギルドや鍛冶師ギルド、果ては町の人までそれぞれの形で協力が求められるらしい。
わからなくはない。こんな世界だ、国民皆兵制度が導入されていてもおかしくはない。
というか自然な流れだろう。
もちろん女子供は守られる側だし、ただの町民よりも冒険者の方が危険度が高い役割をふられる。これも自然な流れだ。
だがなぜ指揮官が冒険者ギルドのギルドマスターなのか。
「それは、冒険者を騎士団などの指揮下に置くと騎士団が仕事しなくなったりするからですね」
「つまり自分可愛さに冒険者を犠牲にすると?」
「そんな人ばかりじゃないですけどね、そういう事例も過去にあったようです。まあ、だからといってギルマスがまともと保証されたわけでもないですけどね」
ふむふむ、ネムちゃんの意見は面白い。
なんかいろいろと遠慮がないし、しかも視点が客観的だ。高所大所から見ているような…
すごく頭のいい子なのかな?
◆・◆・◆
「すまない、ちょっといいかな? 付き合ってもらいたい。
エルダーゴブリンのことで確認を取りたいんだ」
二人で話し込んでいるとそんな風に声をかけられた。
そこにはいかにも事務職ですという感じの男の人が難しい顔をして立っていた。
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