第47話 自転車
彼は出張先で必ず自転車を借りる。
役所などの公的機関のコンピューターソフトの調整を仕事としている彼にとっては、痴呆出張が日常の業務だ。
出張先で一番多いのが名古屋だった。
名古屋クラスの都市になると、自転車の移動がちょうど心地よい。
名古屋の道路は広いので、自転車専用レーンなども充実しているから危なくないというのが良い。
東京でも自転車に乗ってるが、道が狭いうえにクルマが多いので命がけだ。
何度も危なかったことがある。
名古屋も自転車事故は多いらしいが、自分にとっては何より道幅が広いことが安心感につながっていると感じていた。
どこで自転車を調達するのかといえば、レンタサイクル屋ではない。
名古屋でレンタルサイクルのお店など見たことが無い。
だから、会社で借りているウィークリーマンションのオプションで借りるのだ。
ままちゃりしかないが、それで充分だ。
だいいち、マウンテンバイクなんてマンションに置いてあったら、名古屋の中心部なら一晩で無くなる。
東京でも同じだ。門のなかに置いていても盗まれる。
それと重要なのは、彼は酒を飲まないから、夕食は自炊のことが多い。
名古屋は意外とスーパーマーケットが少ない。
地区にもよるが、総じて少ないように感じる。
だから、どうしても自転車で遠くまで買い物に行かなくてはならない。
それに、買い物袋をぶら下げて歩くのが何より嫌だったからでもある。
リックに買ったものを詰め込んでさっと帰れるのがなによりも彼にはありがたかった。
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