ニートがプログラマとして社畜デビューした件について
アルギニン軍曹
プロローグ
俺は楠 孝夫(くすのき たかお)。現在26歳。
趣味はアニメとゲームとネットサーフィン。
高校を卒業してから専門学校に入学したが、半年足らずで中退した。
それ以来、7年間自宅警備に励んでいる。
いわゆるニートだ。
父親は隣町の消防署長をやっており、母親も税理士の資格を生かしてそこそこの収入を得ている。
金持ちとは言わないが、幸いなことに俺が全力で親のスネをかじって生きていても金銭的な不安はない。
ちなみに2つ年下の妹がいるが、他県の大学に行っており一人暮らし中だ。
俺はほとんど家から出ることもなく、毎日昼過ぎに起きてはゲームやアニメ鑑賞にふけっていた。
そんな年の瀬のある日、1階から母親の呼ぶ声がした。
「たかお!ちょっと下りてきて!」
母親が飯以外で俺を呼ぶのも珍しい。
「なに?いま忙しいんやけど!?」
そう俺が答え終わるまでに、食い気味で母親が大きな声を出した。
「エエから、早く!」
面倒くさいと思いながらも、肩身の狭いプータロウの俺はしぶしぶ1階に下りることにした。
母親はリビングにいるらしいが、俺は半年以上も自分の部屋とトイレ、風呂しか移動していない。
久しぶりにリビングに入ると、新しいソファーとテレビが置いてあった。
いつの間に買ったのか。どうでもいいけど、なぜか気になる。
母親は新しいソファーに腰かけており、隣に父親が腕組みをして座っていた。
ヤバい・・・・
俺は直感的に何か不穏な雰囲気を感じ取った。
父親と母親が二人そろって俺を待つなんて、説教以外ないだろう。
「お父さん、4月から転勤になったから。」
「どこに?」
「埼玉。お母さんも付いてくから。」
「引っ越しは面倒くさいなぁ。」
「アンタは引っ越しせんでええ。この家おり。
ただし仕送りはせーへんから、自分で稼いで生きなさい。」
しゃべり方でお気づきの方もいるだろうが、我が家は関西圏に住んでいる。
埼玉なんてとても通勤エリアではない。それは分かる。
それで出た結論が、俺を置いて二人で引っ越すってことらしい。
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!
無茶でしょー!ニートに突然「自立しろ」はないでしょー!
「そんな急に言われても無理やし!そんなすぐ仕事見つからへんやろ!」
俺は数年ぶりに大きな声を出して、全力で拒否の姿勢を示した。
働くことなんて全く想定しなかった俺は、ぐうたら生活が壊れる絶望感と、
就職に対する不安感に圧し潰されそうになりながら、全力で阻止を試みる。
俺は一生このまま生きて行きたいんや。
父親と母親が定年になっても、親の年金と貯金をあてにして生きていくんや。
って言うか、二人ともそのつもりで今まで黙ってたのとちゃうのか!?
すると沈黙を守っていた父親がようやく口を開いた。
「4ヶ月もあるんやから急やない。
ええ加減自立せなアカンし、そもそもお前を扶養する義務はもうない。」
いや・・・まぁ・・・ごもっとも・・・
ってちゃいますやん!
理屈は合ってますけど、現実はそう上手く行きませんやん!
まず働くって時点で割と無理ゲーですやん!
無我夢中で俺は拒否った。
あの手この手で説得しようと試みた。
なんなら家事を手伝う(ウソ)とも言った。
でも無理だった・・・
父親は冷静に言い放った。
「まぁ、もう決めたから。いっぺん頑張ってみ。」
かくして俺は誰もが憧れるニート生活からLV1の就活生へと転落した。
ここから生死をかけた戦いが始まるのである。
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