パーカー

 西に進んで、左の路地。とある花屋。ふわっと香るあの子の匂い。彼女が着ている、いつものパーカー。質素な恰好が、却って僕の心をしっかり掴んだ。

 だけれど話しかける勇気はなくて、それでこうしてわざと彼女の隣を通り過ぎる日々に至った。

 彼女の髪とフードの間、幸せな匂いが籠ったその個所に今日も訪れる。微かな非日常。僕と彼女のパーカーの、静かな幸福。

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