第484話 買い物の後のメッセージ

妹に連れられて、次の店へ行くと

そこは、小さな店舗のようだ


俺「さっきのトコと違って、なんというか……こじんまりとした店だな」

まぁ、俺としてはこのくらいの大きさの店舗の方がいいかな


妹「うん。でも、ここって道具から何から安いんだよ!」

それは助かるな……


うん?


俺「コレってなんだ?」

真っ直ぐな棒状のドライヤー?


妹「あ、それはヒーターだよ」

ヒーター?


俺「何に使うんだ?」


妹「えっと……まずレジン液ってドロってしてるんだけど、色付けたり普通に流し入れるだけでもが入っちゃうんだよね」

気泡?


俺「それって問題なのか?」

気泡なんて、勝手に消えるだろ?


妹「だから、ドロドロしてるから気泡が割れにくいんだよ!基本的に割るには爪楊枝とかで突っつくんだけど、その手間を省けるのがこのヒーターだよ」

ほう?


俺「どう使うんだ?」

ヒーターだから、温めるんだよな?


妹「コレ、結構熱を出せるんだよね。ほら、ここ、やけどに注意って書いてあるでしょ?」

あ、うん


妹「気泡は空気だから、熱で膨らんで割れるんだよ」

なるほどな……


俺「そうか、膨張して割れるのか」

でも、爪楊枝でも割れるんだよな?


妹「そう!爪楊枝だと、1つ1つを手作業で割るんだけど……それがメチャクチャめんどくさいんだよ!中々割れないし、あんまり突っつくと新しく気泡が出来ちゃうしで」

うわぁー……メンドクサ


俺「これ、買うわ」

そんなん、俺いつまで経っても気泡無くせそうにないじゃん


妹「でも、これ3000円くらいするよ?」

う、う~ん……確かに高い

必須のモノではないし、使用する用途もかなり限定されたモノだ

それに、その金額を払うのは……ためらわれるな


俺「なぁ、お前やけに詳しいけど……もしかして、お前もやってるの?」

このレジンとか


妹「え……と、やってはないよ?勉強でそんな時間ないし」

という場合、やりたいって思ってる事が多いんだよな……


俺「そか。それじゃ、買うか」

折角だ、便利な道具は一通り買っておこう


妹「え?まぁ、買うのは任せるけど……」

うん


俺「ま、俺が使わなくなったらお前にやるよ。俺が持ってても邪魔だからな」

有効活用してくれ


妹「え?良いの⁉」

良いも何も


俺「俺は用が終わったら使わないからな。もし使うなら貰ってくれ」

な?


妹「うん!!貰う!!」

そっか


俺「それは良かった」

何よりだ


妹「ここは、チェーンとか金具が安く手に入るんだよ」

ほう


俺「それじゃ、試しに何か買っていくか」

工具類も新調するかな




店内を1周して、必要な物を手にレジへ行く


店員「い、いらっしゃいませ……男性のお客様は珍しいですね」

そうでしょうね


俺「そうですか……」

なんで、そんな気さくに話しかけてくるの?


店員「レジン、やられるんですね」

あ、まぁ


俺「友人への贈り物にしようと思って。初めてやるんで、まだ良く分からないんですけどね」

はぁ……


店員「そうでしたか!もし分からない事があれば、また当店へお越しください!!初めての方には手厚くサポートしますので!」

え?

あ、うん……


俺「あ、ありがとうございます」

何か押し強いな……


店員「そして、是非リピーターになってください!!売上に貢献してもらえる事を期待してます!」

金目当てだった⁉


俺「それは……持ち帰って前向きに検討します」

ここ来るの怖いな……

もし来るなら、妹と一緒に来ようかな


店員「はい!にお願いしますね。はい、お会計は3800円です」

はいはい

じゃ、5千円札で


店員「5千円お預かりします。おつり1200円です」

はいはい


店員「またのお越しを心よりお待ちしてます」

これが、金目当てじゃなかったら……いや、それはそれで怖いな


俺「疲れた……」

なんで会計するだけで疲れるんだよ、この店は


妹「なんか店員さんと話してたけど、どうしたの?」

あ、うん


俺「また来て買い物してくれってさ」

仕事熱心だよ、ホント


妹「そっか。それじゃ帰ろっか!」

ああ


俺「そうだな」



妹と一緒に家に帰る途中、スマホへメッセージが1つ届いた


ん?

南城さん?


千秋 やっほ!今暇?

なんか用事でもあるのか?


A まぁ、暇かな

買い物も終わって帰るだけだし


千秋 なら、ちょっと話したいんだけど

   電話していい?

電話?

メッセージじゃダメなのか……


A ちょっと待って


俺「すまん、ちょっと野暮用ができた。先に帰っててくれるか?」

悪いな


妹「付き合うよ?」

いや、何かトラブルだと巻き込みたくないし


俺「いや、ホント大した用じゃないから大丈夫だよ。それに今日こうして買い物手伝ってくれただけで、助かったよ」


妹「そう、なんだ……用事ってすぐ終わりそう?」

どうだろうな


俺「分からないな」

南城さんの用件次第かな


妹「おっけー!なら、荷物は私が持って帰るよ!」

それは助かるな


俺「さんきゅーな。頼むよ。用事が終わったら、すぐ追いかけるから」

ありがてぇ


妹「うん。それじゃ、行ってらっしゃい」



妹と別れて、少し離れたトコへ歩いて行き

メッセージを返す


A お待たせ。大丈夫になったよ

と送ってすぐに、南城さんから電話がかかってきた⁉

速いな……


俺「はい、もしもし」


南城『もしもし!』


俺「どうしたの?」


南城『うん、ちょっとね……東雲ちゃんの事で』

東雲さんの事、か


俺「何か、あったの?」


南城『何かあったって訳じゃなくて……その、気になるんだよね』

気になる?


俺「何が?」


南城『何がって訳じゃないんだけど……あの先輩達だけじゃない、そんな気がする……んだよね』

それって……まだ東雲さんを逆恨みしてるヤツが他にもいるって事⁉


俺「……ほんとに?」

それが事実なら、大変だぞ


南城『でも、気のせいかもしんないんだけど……でも、気になるの』

そうか

南城さんの勘……いや、名前持ちの勘って言った方がいいかもな

これは、聞き流すには大きすぎる問題だ


俺「俺にも、何か手伝えるかな?」

直接聞いても、多分答えてはくれないだろうけど


南城『えっと、私達としては……複雑な気持ちなんだけど、でも君が適任って事だから』

適任……?


俺「それは、良かった」

役に立てるんだな


南城『うん、私達からのお願い。彼女と一緒に居てあげてほしいの。近くで見守っててあげて、何かあったら私達に連絡して』

見守る、ね……


俺「それだけでいいの?」

他に何かできる事ないの?


南城『いいの!というか、近くでって言ってもくっ付いちゃダメだからね⁉イチャイチャは禁止だからね⁉』

いちゃ……いや、しないって!!


俺「とりあえず、俺は東雲さんを見守ればいいんだよね?」


南城『うん。お願いね』

分かったよ


俺「任せて」


南城『ばいばい、また明日ね』

つーつーつー


さて、問題ってのは何でこうも重なるのかなぁ


文化祭の劇で主役を演じる事、みんなへのプレゼント、東雲さんの置かれた現状

ホント、なんでこんな事になってんのかなぁ


俺「はぁ……困ったなぁ」

1つ1つは、俺でもなんとかなる事かもしれないけど……

全部まとめてってのは、さすがに……いや、言うまでもなく俺の手に余る


とりあえず、帰るか

少し走れば、妹に追いつけるといいな


プレゼントに関しては、妹にもう少し助言を貰おう

せめて、それくらいは楽させてくれなきゃ……精神も身体も持たないっての

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