第400話 小さな佐々木さん

メイド服を着た佐々木さんから逃げて入った教室は、無人だった


俺「ふぅ……」

もしかして、他にもいるのかな……

いたら、ヤダなぁ


佐々木「とりあえず撒いたみたいね」

廊下の様子を確認する佐々木さんは、安堵の表情を浮かべる


俺「それは、良かった……」

何か、疲れたな


佐々木「これからどうする?」

どうするって言ってもな……


俺「何か手掛かりを探すしかないけど」

またあの子に遭遇したら、逃げなきゃならないんだよな……


佐々木「そう、だよね……」

うん、ホント……なんかゴメン


俺「そう言えば、ここからの景色って」

知らない建物とか見えるんだけど、どこなの?

窓から外を眺めると、見える景色に違いがいくつか見つかる

なんか、間違い探ししてるみたいな気になる


佐々木「あ~、一応は君もよく知る街だよ?ただ、時代がちょっと違うだけでね」

時代が、違う?


佐々木「まぁ、景色に関してはそこまで気にしないで大丈夫だよ」

そうなのか……

何かあるのかって気になってたんだけどな


俺「うん……?」

校門の辺りに小さな人影がいる?

目を凝らして見ると……あれは!


佐々木「どうしたの?」

隣に来た佐々木さんも、俺と同じモノを見る


俺「あれって、もしかしてココに案内してくれた子?」

公園に戻ったのに、また来たの?


佐々木「多分、そうだね」

そっか

あ~……癒されたいなぁ……

あの子はまだピュアだろうし、話ししても変な言葉は出てこないだろ


俺「ちょっと話してみない?」

癒されに


佐々木「え?あの頃の私じゃ、何の手掛かりも無いと思うけど……というか会いたくないんだけど?」

いいんだよ

一旦気分変えたいだけなんだし


俺「いや、ほら、何かすごい発想力でヒントが手に入るかもしれないじゃん⁉」

子供の発想って凄いからさ!

中々説得力のある言い訳が出来たな


佐々木「う~ん、君がそこまで言うなら……まぁ、少し話してみる?」

よしっ!


俺「うん。それには、ここから脱出しないといけないね」

メイドバージョンの佐々木さんは、今どの辺りにいるかなぁ

鉢合わせたら、最悪だ


佐々木「多分、大丈夫だよ。もうコッチには来ないと思うから」

そうなの?


俺「なんで?」

言い切れるの?


佐々木「それは、まぁ、私だから?」

えっと……そうか

佐々木さんの事は佐々木さんが一番わかってるって事か


俺「なら、あの子が居なくなる前に行こう」

貴重な癒し枠だ


佐々木「何かすごい乗り気だね?」

そ、そんな事ないよ?


俺「手掛かりを探さないといけないからさ」

今、名前無しで良かった……

表情があれば、絶対に目が泳いでるな


佐々木「うん……そうだね」

なんか警戒されてる?

ま、まぁ、いいさ





佐々木さんと一緒に、校舎を出て校門へ向かうと


「あ!おにーさん!」

あぁ、純粋さに癒される


俺「やぁ、こんな所でどうしたの?」

可愛いなぁ


佐々木「なんか、対応が違う……」

うっ……


「あのね、おにーさんがちゃんと会えたか気になったの」

会えたって、佐々木さんと?


俺「うん。そっか、ありがとうね」

優しいなぁ

良い子だなぁ

なでなで


「えへへ」

可愛いなぁ


佐々木「ゴホッ」

ワザとらしく咳払いをして、何してるの?


「どうしたの?」


佐々木「媚びるのも大概にしてよ!見てる私の方がキツイんだよ!!」

媚びる?

何言ってんだよ

これくらいの年齢なら、こういう反応が普通だろ?


「ひどーい!そんな事してないもん!」

そうだ、そうだ


佐々木「へぇ、媚びるなんて難しい言葉知ってるんだ?どうしてなかぁ?」

うん?


「そ、それくらい知ってるもん!」

賢いねぇ


佐々木「もう止めて!語尾に“もん”とか付けないで!!」

うるうるした瞳で必死に訴えかける佐々木さん

小さな子に文句言っても仕方ないよ?


「はぁ、もっとメンタル鍛えないとダメだよ?」

ん?


「ね?おにーさん」

えっと……?


俺「どういう?」


「まさか、おにーさん私の事ピュアな女児だとでも思った?」

……はぁ⁉


「そんな訳ないでしょ?」

騙された⁉


俺「うそ……だろ……」


「おにーさんも騙されやす過ぎ!」

は、はい……

どうしよう、ショックが隠せない……


佐々木「もう要件だけ済ませて、さっさと次行こう」

そうだな


俺「うん」


「要件?私みたいな女児に?」

なんだろ……信じていたのに裏切られた気分だ


佐々木「彼をここから帰す方法がね、見つからないの」


「ふ~ん……そっか。私思い付いちゃったけど、聞く?」


マジかよ⁉

この幼女スゲーな⁉

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