第127話 やっと外へ

四季島「いえ、まだ間に合うかもしれません」


父「不可能だ……一度名前持ちになってしまえば、もう二度とmobに戻る事はない」

……父さん


四季島「まだ、あの男の研究は完璧ではありません」


父「学生の君に何が分かる⁉すでに息子は変質してしまったんだ!!」

もう、戻れないのか……


四季島「まだコイツは、あなたの息子のままです!父親なら、それぐらい分かってください!!アナタは研究者である前にコイツの父親なんです!」

大きな声で父さんを怒鳴る四季島の眼はまだ何も諦めていなかった

悲観し、後悔しかしない父さんとは真逆だった


父「四季島くん?」


四季島「確かに俺は所詮ただの学生です。でも、俺は四季島太一名前持ちです!!この名前に掛けて、コイツを変質前に戻す方法を見つけ出します!」


父「何を言って」


四季島「これから父上に連絡を入れます。俺には何の力もない、けど父上なら何とかできる!俺の目標とする人物は、そういう存在です!!」

四季島はポケットからスマホを出し、電話を掛けた


四季島「父上、私の大事な友人が大変な事態に陥ってます。力を貸してください。条件?……分かりました。その条件、全面的に受け入れます。はい。では」

通話を終えて、俺の眼を見て

フッと笑う


四季島「この俺に任せとけ。俺は主人公級の名前持ちネームド、四季島太一だ。名前持ちの先輩として本当の力ってのを見せてやるよ」


俺「四季島?」


四季島「これから一緒に来てくれるな?」


俺「どこに?」


四季島「前に来たろ?四季島グループの病院兼研究施設さ」


俺「あそこか……」

血液とか検査した施設


四季島「車はすぐ来るだろうから、外で待つぞ」


俺「お、おう」

本当に大丈夫なのか……?


四季島「心配するな。必ずお前を救ってやるからな」

あれ?

四季島ってこんなに頼もしかったっけ?


俺「あれ?そういえばあの男は?」


四季島「犯人か?それなら上で捕らえてある。安心しろ」

上?

あの男は2階にいたのか?

上を見上げると、俺の視線を察して四季島が後ろのカーテンを開ける

外の景色を確認できると、思った

しかし……

そこには、窓がなかった⁉

あるのは空調用の送風口みたいだ

少しカーテンが揺れる時があったのは、そこから空気が流れ込んできたからだったのか⁉


四季島「勘違いしてる、というより単純に知らなかったみたいだな。ここは、犯人の家の地下1階だ」

ち、地下!?

わざわざ地下にこんな場所を作ってたのか……⁉


四季島「多分、極秘の研究所だと考えていたんだろうな」

そうまでして、研究を完遂させたかったのか……

なんていう執念なんだ


父「それに地下は管理しやすいからな……」

管理しやすい?


四季島「なるほど、確かにそうですね。窓がないから日光の影響も最小限で済みますしね」


父「君は賢いんだね。さすがは名前持ちと言ったところか」


四季島「そう、ですね……」


俺「父さん」


父「な、何かな?」

かな?って、普段なら『何だ?』っていうのに……


俺「四季島はさ、名前持ちだけど……努力家なんだよ。名前持ちだから賢いってわけじゃないんだよ」


父「しかし」


俺「だってさ、南城さんなんて名前持ちだけど……賢くはない、よ?」


父「ふむ……そうか」


俺「それより、何か持ち出せるものとかってないの?あるなら、持って出よう」

何か、父さんの様子も少しおかしいな……


父「そう、だな。うん、ではそうしよう。四季島くんも手伝ってくれるかい?」


四季島「もちろんです」

俺たちは父さんが発見した研究所へ行き、父さんの指示で使えそうな物を持てるだけ持って地上へ上がる

階段を上がりきると、出た先は食事を振る舞われた部屋だった


ここに、隠し階段があったのか……


俺「ここか」


四季島「さ、外へ出るぞ」


俺「ああ」

荷物を持って玄関を出ると、強い日差しが照っていた


俺「眩しいな……」


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