第123話 大家さん……⁉
目が覚めると、見たことのない部屋で手足をイスに縛られていた……⁉
声を出そうとしたが、口にはガムテープが貼られていて動かない
体を捩り動かしてみたが、拘束が緩むなんて事もなかった
幸い目隠しはされてないから部屋の中を観察はできたが、ほぼ何もない……
首をグルっと限界まで捻って後ろを確認すると、大きなカーテンが見えた
正面には頑丈そうな扉が一つ
左右には何もなく、俺は部屋の中央にポツンと放置されていた
なんでこんなことに?
ダメだ……
全然考えられない
必死になって考えようとしているとガチンという音が鳴り扉が開く
現れたのは……大家さんだ!!
た、助かったぁ……
俺「ん~~~~!ん~~~~~~~~~!!」
大家「おやおや、目が覚めたようですね。大人しくしてください」
あ、そうか……
俺をこんな目に遭わせた犯人に気づかれるかもしれないもんな
大家「ふむ、聞き分けのいい子は好きですよ。では……」
これをほどいて脱出しよ!!
大家「実験を始めましょう」
じ、実験?
いや、逃げないと!
大家さんが口のガムテープを剥がしてくれて、やっと喋れるようになる
俺「大家さん!早く逃げないと!コレほどいて!」
大家「はて?君は何を言ってるんですかな?」
俺「だから、犯人が戻ってくる前に逃げ出さないと」
大家「犯人、ねぇ……君はこの状況で、犯人が誰か分かっていないと?」
誰が犯人か……?
大家「君を拘束したのはぁ、私ですよ~?……ふふ、はは!本当に“いい子”ですねぇ!気味悪いくらいだ!!」
は?
大家さんが……俺を?
なんで……?
大家「おや、不思議そうな顔ですねぇ」
俺「なんでこんな事を……なんで俺をこんな目に」
大家「だから実験だと言ったでしょう?私の研究テーマなんですよぉ、
意味が分からない……
それになんの意味があるんだ⁉
大家「ふっふっふ、やっとちょうどいいサンプルが手に入りましたよぉ。君というサンプルをねぇ」
サンプル?
俺が?
大家「これでやっと私の研究は日の目を見るんですよぉ!」
俺「俺は、協力なんて絶対にしないぞ!」
大家「ふむ?君は何もしなくていいんですよ?そこでじっとしていれば、ね」
俺「なんだと……?」
大家「君が眠っている間に唾液、表皮、血液、毛髪と様々なサンプルは採取済みですからねぇ」
俺「ならもう用無いだろ⁉解放しろよ!」
大家「何言ってるんですか?材料が足りなくなるといけないから、私の研究が完成するまで君にはここに居てもらいますよ~」
俺「ふざけるな!」
大家「ふざけるな、だと?ふざけてるのは君の方ですよ!!私が人生かけて研究していたものを……体質の一言で片付けるなんて、あんまりにもふざけてる!!!」
俺「そんなくだらない研究なんて辞めちまえ!」
大家「君は“特別”に興味はないのですかな?」
俺「ない!普通が一番だ!」
大家「ふふっ、なんとも皮肉ですなぁ……普通を望む本人が、何よりも特別な存在だなんて……まさに
ピエロ?
大家「にしても……君が何の警戒もなくウチに来るとは思いませんでしたよ。てっきりあの男から警告されてると思ってましたからねぇ」
あの男って父さんのことか?
警告は、されたさ……
でも、馬鹿みたいに信じたのは俺だ……
くそ!父さんの警告を聞いてれば……
大家「さて、それでは」
俺「な、何する気だ⁉」
大家「何する気?もちろん実験と研究ですよ?あいつ等を見返してやるんですよ!!私を
研究所?
大家「そして、今度は私があの男を解雇するんです!お前の研究より、私の研究の方が優れていた!そう証明してやるんです!!」
何言ってんのか、ぜんぜんわかんねぇよ
大家「ふむ、反応が悪いですねぇ?……もしかして、君は父親がどんな仕事をしてるか知らないのかなぁ?」
俺「それがどうした⁉」
大家「はぁ……全くもって、つまらない男ですねぇ……。なら私が教えてあげましょう、君の父親がどんな仕事をしてるのかをね」
父さんの仕事……?
大家「君の父親は、『人類運命研究所』の所長なんですよ。そして研究内容は
人類?運命?
所長?
ひうんめいか?
大家「君はバカですねぇ、父親と全然似てない。非運命化っていうのは名前持ちが特別な運命に巻き込まれるのを防ぐ事を目的とした研究ですよ」
特別な運命?
それを防ぐ?
そんなこと可能なのか?
大家「その研究が完成してしまえば、
俺「だから何だっていうんだ⁉」
大家「君には、説明しても理解できないでしょうね……これだからバカってやつは」
バカバカうるせぇよ!!
大家「まぁ…バカなおかげで、苦労せず捕らえることができたわけですがね~」
大家「それでは、先ずは君に名前持ちになってもらうとしましょうか」
注射器を構える大家さん
なんとか藻掻いて抵抗しようする
大家「暴れたら危険ですよ?針が変な所に刺さったり、途中で折れてしまえば命に関わりますからね……君が死のうと、私は研究を続けますからねぇ」
俺「俺っていうサンプルがなくなったら困るんじゃねーのか⁉」
大家「そしたら代わりのサンプルを捕獲するまでですよ?君の妹とか、ね?」
妹のことも知ってるのか⁉
くそ……どうすれば……
暴れて俺がダメになれば、今度は妹が被害に遭うなんて……八方塞がりじゃねーか!
大家「おやおやぁ?本当に君の妹もサンプルになるんですか⁉これは朗報ですねぇ!!家族内にサンプルを2体も隠してたなんて、所長は人が悪い」
な⁉
カマかけられたのか⁉
くそ……くそくそくそ!!!!!
大家「ちょーっとチクっとしますよぉ」
注射を打たれると、鼓動が早くなりイヤな汗が噴き出してくる
俺「何を……」
うぇ……気持ち悪い……なんだこれ……目が、回る……
大家「君から取り出したN-DNAをさらに活性化させた物です。君は少ししたら名前持ちに生まれ変わるんですよ!おめでとう!コレで君も“特別”の仲間入りだ!!」
ふざ、けるなぁ……そんな注射1本、程度で名前持ちになんて
大家「いやぁ、15本でやっと変化が発生しましたねぇ」
じゅ、15本……⁉
大家「それじゃ、私はラボで研究の続きをしてきますかねぇ。君が名前持ちになった頃にまた来ますよ。楽しみだなぁ!」
そう言って大家は部屋から出て行った
丁寧なことに頑丈そうな扉の鍵をかけて……
扉は中からは鍵が開かない仕組みみたいだ
何とか拘束を外せても、逃げるにはカーテンの外…窓から出るしかないのか……
ここが何階か分からないけど、高層階だったら詰みだな……
断続的に続く不快感に襲われながら、俺は必死に逃げる方法を考えるのだった
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