第116話「冒頭一文に関しては夏目漱石『文学論』より引用」

 余が英国に留学を命ぜられたるは明治三十三年にて余が第五高等学校教授たるの時なり。

 夏目金之助は倫敦ロンドンの町でノイローゼになっていた。

 金之助は日本人(一般人が想定するアジアの黄色い人種を指す言葉。コンプレックスが強い)よりもずっと英国人の容姿が優れていることに落ち込んでおり、往来に向こうから背の低い妙な汚い奴が来たと思えば、自分の姿の鏡に映したものであることに絶望していた。おまけに倫敦は空気が汚くスモッグが漂っており、金之助は英国紳士の間にあって狼群に伍する一匹のむく犬の如く、あわれなる生活を営んでいた。

 だがいきなり長いレールガンをもった女子高生がやってきて、とにかくすごい自信に満ちた様子で倫敦の街に盛んにレールガンを放っている様子を目撃した。

 金之助は日本人の女学生が英国で堂々とした態度を取れていることに感動し、帰国後に「我輩ハ女学生デアル」を執筆した。


 ○夏目漱石なつめそうせき


 日本を代表する小説家。代表作に「我輩ハ猫デアル」「草枕」「坊っちゃん」「こころ」「明暗」など。明治三十三年から明治三十五年にかけてイギリス留学をしているが、帰国後に執筆した「文学論」の序文では「倫敦に住み暮らしたる二年は尤も不愉快の二年なり」と語るなど、その生活は惨憺たるものであった。

 多くの門下生を育てたことでも知られており、芥川龍之介、内田百聞などもその一人である。




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