第103話「青春の1ページ(文芸部編)」

 平成三十一年、現代の日本。

 太宰治女子高生は古武術研究会の隣の文芸部でオタサーの姫になっていた。

 太宰治女子高生は同時代の先輩作家(一般人の想定する川端康成を指す言葉。太宰治を芥川賞で落とした結果「刺す」だの「大悪党」とまで言われた)よりもずっと女性の一人称小説に長けていると自負しており、自作の「女生徒」のごとく見事に女子高生を演じて文学少女だけのハーレムを形成していった。おやすみなさい。私は、王子さまのいないシンデレラ姫。あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

 だがいきなり仮面を被った三島由紀夫女子高生がやってきて、とにかくすごい不遜な態度で「僕は太宰さんの文学はきらいなんです」と悪口を言った。

 太宰治女子高生が本気で泣き出してしまったのでみんなが三島由紀夫女子高生を非難した。




 ○津島修子つしましゅうこ

 日本を代表する作家、太宰治が女子高生として転生した姿。女癖の悪さは生前そのまま。その作品は「人間失格」があまりにも有名だが、一方で「女生徒」「斜陽」などの女性の一人称小説も手掛けており、芥川賞で太宰を落とした川端康成も「女生徒」や「斜陽」は非常に高く評価しているが、これは大部分が知人女性の日記の抜き書きだったらしい。生前、三島由紀夫に罵倒された際は「こうして来てるってことはやっぱり好きなんだな」と余裕を見せたとも「だったら来なけりゃいいじゃねえか」と涙目になったとも伝えられる。

 なお、本作は佐藤友哉の作品とは何の関係もない。

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