第59話「感謝するぜ、ゴリハルトと出会えたこれまでの全てに!」

柳生十兵衛の回想――十年前。

ゴリハルト王国の動物園で、柳生新陰流の勢法を繰り返す柳生十兵衛が現れた。

柳生十兵衛は流石にホモ・ハビルス(一般ゴリラが想定する進化が遅れた類人猿を指す言葉。もう少しでピテカントロプスになれる)に比べれば少しはマシな知能をもっていたが、残念ながらゴリラ語を話すことができなかったため、ただの珍しいサルと見なされて動物園で飼育されていた。

十兵衛は服も着せてもらえず、檻の中に鎖で繋がれ、飼育員から貰えるエサと時々ゴリラの子供たちが投げる果物だけが唯一の日々の楽しみだった。それでも十兵衛は柳生新陰流の鍛錬だけは決して忘れず、日本刀の代わりに飼育員がくれた木の棒を振って必死に剣の修行をした。そのあまりに洗練された体捌きを目にしたゴリハルト一二三世は、ひょっとするとこのサルは言葉を話せないだけで我々と同様の高い知能を持っているのではないかと考えた。

そこでゴリハルトはいきなり制止を無視してゴリハルト王家に伝わる宝刀『約束されたゴリラの剣エクスゴリバー』を抜いて檻の中に入り、とにかくすごいゴリラ式剣術で十兵衛と剣をぶつけ合った。

戦士と戦士の間に言葉は不要いらない――十兵衛とゴリハルトはこの瞬間、種族を超えた誠の友となった。

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