ろりこんくえすと!
ノω・,) ウゥ・・・
第1章 エピローグ
まだ日も登っていない朝方。僕が住む村では少し老いた男女の怒声と、ドタバタと激しい物音が響いていた。
「ウェルト! こんなことをして一体どういうつもりなの!? 早くこの縄を解きなさい!」
「ウェルト! 何でこんなことをするんだ!? お前の目的はなんなんだ!?」
冷たい床の上で僕の両親が簀巻きにされて無様に転がっていた。両手を雁字搦めにされ
一体誰がこんな惨いことをしたのだろうか。
ま、やったのは僕なんだけど。
両親は顔を真っ赤にしながら、孵化する直前の虫の蛹みたいにじたばたともがいている。
僕は両親を見下して嘲笑う。
ははっ、いい気味だ! 自由! 僕は自由を遂に手に入れたぞ! はーはっはっはっはっはっ!
もういい加減うそんざりなんだよ! 毎日毎日、農作物を襲う魔物と戦って、畑を耕して! ずっとその繰り返し!
辛いわ! もう繰り返される魔物の戦闘と農作業で何年も筋肉痛に悩まされているんだよ! しかもこの村を襲ってくる魔物はどいつもこいつも強いんだよ!
アケビぶっ飛ばしてくるワイルドボアとか、ドングリ爆発させてくるワイルドボアとか、タケノコ飛ばしてくるワイルドボアとか!
もうやだ。こんな魔境同然の所住めるか!
と思い立った訳で家出しようと僕は両親を簀巻きにした次第です。はい。
「悪いね父さんと母さん。僕は農夫になるだけの人生、そしてここの生活に嫌気が差したんだよ。村を出て冒険者になってくるよ」
僕は勝手に家にある食料や日用品を袋に詰め込みながら、両親に言った。
「どうしてよウェルト! 農夫なって、まったりとスローライフを送ることの何が気に入らないのよ!?」
凶暴な魔物が日夜問わず襲ってくるこの村でスローライフを送ろうなんて、相当頭おかしいと思うんですけど。
「そうだぞウェルト! お前を育ててやった親に対してなんて仕打ちだ! それに冒険者なんて生活が不安定職業、お前がやっていける筈がないだろ!」
何が育ててやっただ。物心付いた五歳の頃から僕の扱いは奴隷と同じぐらいだろクソ親父が! それにここの生活と比べたら、冒険者の方がまだ数十倍はましだから。
そんな物分かりの悪い両親に向かって僕は言ってやった。
「ぺっ。やーだね。こんなクソみたいなド田舎、誰が住みたいと思うんだよ。ほら、よく言うでしょ? 可愛い子には旅をさせろって。だから僕は家を出ていきますね」
僕は簀巻きにした両親に、お別れの挨拶にそれぞれ蹴りを入れてドアを開けた。日頃の恨みも込めてかなりきつく蹴ってやった。
「それじゃ父さんと母さん。行ってきます」
「待ちなさいウェルト! これからどこへ行く気なの!?」
「街さ」
僕は母親にそう答え家の扉を開いた。遥か遠くからは太陽がほんの僅かだが顔を出し、朝の日差しが僕の身体を照らしていた。
「言っただろ? 僕は街に行って冒険者になるって」
僕の、僕だけの物語が始まりを告げた。
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