138話 縛りプレイ
「いやー実際相手にしてみると、中々難しいね」
数十人を相手にしているハヤトは、苦笑いしながらアキトに問いかける。
結局、他の学園の人たちはムルドが言ったことを鵜呑みにし、アキト達ルイン学園の生徒とたった一人レイ・クラウド学園のバーン・グラウドを狙って一心不乱に攻撃を仕掛けてくる。
しかも、それを良いことにズ・バイト学園の生徒達は後ろから高みの見物かのようにその様子を眺めている。
勿論ムルド・ラクシーも同様だ。
「これだと、ダンジョン入る前に力尽きそうだな」
「それはないでしょ!」
「いや、冗談なんだが……」
少し、冗談を混ぜたつもりだったがハヤトは結構真剣に答えて来たので少しびっくりした。
「あ!冗談か……ごめんごめん、アキトあんまりそういうこと言わないからついね」
「そんなに俺冗談言わないかな……」
「意外と言ってないよアキトは」
ハヤトは飛来する魔法やスキルを最小限の動き躱し、辺りの地面がクレーターのように変形する。
さっきまで綺麗だった地面はボコボコになり、見るも無残な姿になっている。
「お前ら!根性が足りんぞ!!!」
「面白くねぇ……」
横で、バーンとクロムはアキトとハヤトよりも他学園の生徒を気絶させており、何十人と足元に転がっている。
この二人が、殆ど蹴散らしてくれるのでアキトはかなり楽をしている。
バーンは魔法やスキルを避けることなくただただ突っ込んで殴り、クロムは対照的に全ての攻撃を避け、相手の懐に入り確実に一発でダウンさせる。
このままでは時間の問題だろう……
徐々に、後ろにのさばっていたズ・バイト学園の生徒達も顔がひきつっていく。
はっきり言ってこの光景は異様だった、互いに一年生のはずなのにこれだけの実力差があるんだから。
他のルイン学園の生徒も誰一人倒れておらず、ウタゲの特訓のおかげでこのくらいの試練は何とでもなさそうだった。
「へぇーレイ・クラウド学園は強いのは知ってたけど、まさかここまでルイン学園に押されるとはねぇー」
ムルドはようやくその思い腰を上げ、座っていた岩から降りる。
それが合図かのように、ズ・バイト学園の生徒達も戦いに参加し始める。
「ちぇやあああああああ!!」
背後から声を荒げながら迫るどこの学園か分からない生徒を捌き、その腕を掴み後方にいる魔法やスキルを放って来る面倒な奴らの元へ投げ飛ばす。
そして、ちょうど投げ飛ばした時に魔法を放ってしまい、その生徒は叫ぶ間も無く魔法が数弾被弾し、地面に落ちる。
そして、回復属性系の魔法やスキルを使ってもらえるわけもなく……
「少しは怯むと思ったけど、問答無用か……」
「後ろにいるのはズ・バイト学園だからね……他の学園は良いように使って散ってもらったほうがあっちにしたら好都合でしょ」
この様子から見て最初からほぼ戦力として見てなかった。
「闇属性魔法<闇海/ダークプール>」
「うゔぁああ!助けてくれ……」
クロムが残り少ない、ズ・バイト学園以外の全生徒へ向け魔法を放つ。
それぞれの生徒の足元にある地面が水のような液状になり、吸い込まれ本来なら窒息死させるものだが、殺したら一発退場なので、加減を加えて気絶状態に持って行く。
「へぇー意外と優しいんだな」
「あ?うるせぇ、ルールだからしょうがねぇだろ」
クロムはここら辺躊躇が無いと思って、介入しようと準備していたが、案外しっかりと計算して魔法を放っているのでアキトは関心する。
「面白い魔法だな!!俺も行くか!!」
バーンは、クラウチングスタートの体勢になり、力を込めると体が触れている地面が凹む。
重圧が急激に膨れ上がり、バーンの周囲にあった岩や地面の破片が浮かび上がり、その威力を物語っている。
「ガァアあああああああ!!」
ここで、バーンの固有属性を見ておく必要がある。今後の強敵なのは間違い無いからだ。
「その技はまずい、全員で奴を全力で止めろ!!じゃないと下手したらお前ら……死ぬぞ!」
ムルドは少し焦るように指示を出す。
「ここは私がやりましょう、禁錮縛属性魔法<禁錮刑十年/コルクテン>」
少し、ガタイのいいかなり老けた感じのハゲた男が、バーンの前に出て魔法を発動する。
「なんだ?これ……」
バーンの下から金属製の柱が突き出し、交差するように連なり、まるで檻のように象っていきバーンを完全に閉じ込める。
突然監禁されたのでバーンはそっちに気がいってしまい集中力が切れてしまう。
「私は、ズ・バイト学園キャニオン・オーガス。バーン・グラウドさん申し訳ありませんが少し閉じ込めさせてもらいます」
「そうかそうか!すげぇな!お前」
何故か突然バーンはキャニオンを褒め出す。
「バーンさん大丈夫ですか」
本人はけろっとしており、九十九%意味は無いと思うがアキトは一応心配しておく。
「おう!大丈夫だぞ!!」
「流石のレイ・クラウド学園の方でも私の檻は突破することは不可能です」
「おい……敵はあいつだけじゃねぇぜ」
「ーーっ!!」
いつの間にか、ズ・バイト学園の生徒を全員気づかれないよう躱しクロムはキャニオンの目の前にいきなり現れる。
実際はいきなり現れたのではなく、あまりにも自然に流れるような綺麗な動きで、生徒の間を駆け抜けたので接近されるまで気づけなかったのだ。
だが、キャニオンもキャニオンでクロムに気づいた瞬間、即座に後方へ跳び距離を取る。
「良い動きだ……だが、まだたらねぇ」
「凄いですねあなたも……」
バーンにやったのと同じように金属製の柱が数十本もクロムの足元から突き出し、囲い込もうとする。
だが、その小さな隙間をギリギリ触れないように針の穴に糸を通すような動きで、全てを軽々躱し、キャニオンに近づく。
まさか全部避けられるとはキャニオンも思ってもなかったのか、さらに追加で柱を出現させる。
しかも今度の柱は柔軟性が強く、鞭のようにしなっている。
そんな柱がクロムを襲うーー
左右上下全ての角度からの攻撃に対し、クロムは走る速度を変え、フェイントを加え柱すらも騙し、予測不能な動きで惑わす。
「くっ!!」
キャニオンもかなり近づかれとうとう顔が渋くなる。
「俺に攻撃は当たらねぇよ」
アキトもズ・バイト学園の生徒と戦っているので途切れ途切れになってしまうが、クロムの敏捷性が凄いことが一目で分かる動きだった。
その動きにはハヤトも目を釘付けにしており、体だけ戦っている状態である。
「余裕なのもそれまでですよ!!禁錮縛属性魔法<禁錮刑五十年/コルクフィフス>」
「最高だな……お前……」
クロムはこの中で誰よりも嬉しそうに笑いながら戦っていた。
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