43話 課題
「うおぁああああ!!!!!」
バルトは火を纏った拳でスケルトンをなぎ倒して行く。
だが、スケルトンに疲労という概念はないが人間はそうではない。
最初は押していたバルトも徐々に押されて行く。
シロネの召喚するスケルトンはどれも骨があり強い。最初バルトは一体倒すのに苦労してたくらいだ。
「どうしたのじゃ。わしに一発、くらわしたいんじゃろ」
シロネはバルトの癖を一瞬で見破り、的確に弱点をついていた。
「くっそーーーーー!!!」
バルトは何とか一発くらわせるため、試行錯誤するがすぐに諦め少し休憩を挟む為スケルトンと距離をとる。
だが、それを分かっているのかシロネは弓を使うスケルトンでバルトの休憩を許さない。
そしてバルトは魔法、スキルを使う余力は全くなく、今はもう裸単騎で挑んでいる。
その後、昼まで延々とバルトはスケルトンと戦っていた。
最後の方は体の疲労がピークを超え過ぎて逆に疲れを感じなくなり、シロネが見かねて中断させた。
「あれだけ言ってきよっただけはあるの。が、まだまだじゃ」
そう言ってシロネは次のトルスの特訓を見るため移動していった。
バルトは昼ご飯と一緒に大量の水をがぶ飲みする。
辺りは砂漠帯で、いくら火属性を扱うバルトだからといってこういう熱に強いわけじゃないーー喉は乾く。
「あぁあああうめぇ〜」
喉に入ってくる氷のような冷たさの水が俺の体内で吸収されてるのが分かるくらい染み渡る。
そこからは昼食を終わらせ次の特訓内容に入る。
シロネには、タフさは認めるが動きが単純で分かりやすいと言われていた。
なので、バルトはマグリとの訓練で実戦経験を養うという事で午後から始めるが、まだマグリは来ていなかった。
バルトは辺りを見渡し探す。
すると、砂の色と同化した砂埃の中薄っすらと巨大な二枚貝を見つけ、その二枚貝にバルトは声をかけようとした時後ろから声をかけられる。
「あなたが今回の特訓相手ね……」
女性のような男性のような中性的な声が聞こえる。
バルトは後ろを振り返るとそこにはバルトの身長以下小さめのマグリがいる。さっきまで薄ら見えた巨大な方はもう消えていた。
「おう!よろしくな」
「じゃあこれから日が沈むまで戦闘するからよろしくね〜」
そう言ってマグリは距離をとる。
この時バルトは小さいマグリを見て少し舐めてかかってしまった。その慢心が響き、訓練は一時間も持たずに疲れ果て、シロネの時とは違い一瞬で気を失った。
**
シロネはトルスの元にいた。
この一週間でのアキトの目標は、発動時間の長い魔法やスキルをもっと短く出せるようにすることと、汎用性に乏しい発動時間の短い魔法やスキルの強化だ。
トルスはそのことをシロネに伝えるときっぱり断られた。
「そうなるのも十分に理解できるのじゃがお主がやることはただ一つ得意な属性魔法の威力をとことん上げるのじゃ」
「それに、汎用性に欠けると言っておったがお主が食わず嫌いして使わぬだけじゃ、言い訳にすぎん。トルス、お主はただ高威力な魔法やスキルを使うのが好きなんじゃろ?だからそのちまちました方は使いたくない違うかの?」
トルスはそこを突かれるとは思わなかった。
派手な技というよりはより高威力で派手な技がトルスは好きなのだ。なのですぐバテてしまう。
一次試験の時もギリギリだった。
「確かにそうかもしれん」
シロネの眼差しは真剣そのもので、トルスは素直に受け止める。強くなる為、ここを変えなければトルスにこの先の強さはない。
そう言って、シロネはスケルトンを一体のスケルトンを召喚する。
一見普通のスケルトンなのだが、両手盾を持ち、しかも、魔法、スキル付与付きだ。
ただでさえ両手盾は耐久力、防御力に優れているのに魔法やスキルまで付与されての突破は今のトルスではかなり困難だった。
「お主にはこのスケルトンをあそこまで魔法、スキルのみで移動させてもらうのじゃ」
そう言って指さした先には巨大な岩がありスケルトンとの距離は大体百m。
「あの、岩か……」
「うん?何をとぼけておる、あの岩の先じゃ」
シロネは巨大な岩ごとスケルトンを運べと言っていたのだ。
それに気づいたトルスはその難易度に身震いする。
「ぶっちゃけ、あと一週間で燃費の良い魔法やスキルの特訓をしても間に合わんのじゃ。染み付いた癖はそう簡単には抜けんからの……なので長所を思いっきり伸ばす、それにしぼってやるのじゃ」
「このスケルトンをあそこまで移動させてる頃には恐らく生徒、教師含め最高火力となるじゃろう」
トルスはシロネに言われて俄然やる気が湧いて来る。
「分かった、この一週間であそこ以上まで移動させてやる」
「そのいきじゃ、それではわしは次を見に行かんとじゃーーじゃあの」
そのままシロネは次の人の方へ行ってしまう。
「っし!!」
トルスは気合いを入れスケルトンと向かい合う。
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