17. おっさん、からまれる

 

 奴隷登録証を受け取り、俺たちは奴隷商館を後にした。


「とりあえず、服とか買いに行きますかー」


「あ、あのその前に降ろしていただいてもよろしいですか・・?もう大丈夫ですので・・」


 お姫様だっこしたままでした。流石に街中でそれは恥ずかしいですよね、ごめんなさい。

 ダークエルフ少女をそっと下に降ろす。シラユキさんもようやく俺の脚から離れる。もうおなかいっぱいですか?俺のふとももはよだれでべしゃべしゃですが。


 ・・ん、シラユキさんが目の前で両手を上にのばし、ぴょんこぴょんこ飛び跳ねている。


「・・どしたー?」


「だっこー!」


 ぴょんこぴょんこ。あまえんぼうさんですか。よろこんで。

 だっこしてあげるとシラユキさんは『むふー』と満足そうにうなずいた。


 とりあえず近くのお店でダークエルフ少女用のローブと、下着数枚を購入。裸足なのでサンダルも。ていうか奴隷は裸足がデフォなの?可愛い少女が裸足とかバカか。お天道様が許しても、足フェチのおっさんが許しません!

 いつもの公園のベンチでローブを着せサンダルを履かせる。


『・・きゅるるるー』


 なんか可愛らしい音がした。


「あっ、あっ・・」


 少女がお腹をおさえて慌てている。恥ずかしいのか顔を真っ赤にして目に涙を溜めている。


(そういえば昼飯まだだったな。たしかインベントリに・・)


 バックパックから取り出す振りをして、インベントリから昨日の夕食のパンを取り出す。

 一つを少女に渡し、自分とシラユキさんも一つずつ。ベンチにならんでかぶりつく。


(焼きたてそのままだな・・インベントリは時間が停止もしくはゆっくり経過しているみたいだ)


 シラユキさんはいつものように、ほっぺをふくらませてもきゅもきゅ食べている。

 一方少女は泣きながら食べていた。


「こんな美味しいパンはじめて食べました・・」


 あかん、おっさん貰い泣きしそう・・今までつらい思いをしてきたんだね。


「まだあるから、いっぱいお食べ」


 頭を撫でてやると、少女は泣きながらコクコクと何度も頷いた。


 なかよく3人でパンを食べていると


「・・おまえか!ベヒモスの素材を持っているというのは!!」


 金属鎧を着たガラの悪そうな男2人がこちらに近付いてきた。


「いえ、持っていません」


 面倒なので嘘をつき、パンを食べる作業に戻る。もきゅもきゅ。


「・・貴様、嘘をつくな!!!」


 急に大きな声を出したので、シラユキさんがびっくりして食べかけのパンを落としてしまった。


 ・・ブチッ!!


「うちの子がまだ食べてるでしょうがぁぁぁぁぁ!!!」


『ドガァァン!!』


 次の瞬間、俺のアッパーがガラの悪そうな男Aを空高く舞い上げていた。


 地面に叩きつけられた男Aは意識を失ったらしく、ピクピクしている。

 むしゃくしゃしてやった。反省はしていない。

 シラユキさんには新しいパンを出してやる。落としたパンはもったいないけど、拾って食べたらお腹こわすかも知れないからね。


「・・き、貴様!我々が領主様の私兵だと知っての事か!!」


 いや、知らんし。


「・・みねうちです。安心してください」


「ふざけたことを抜かすな!・・貴様覚えていろ!!」


 ガラの悪そうな男Bは走り去っていく。

 ちょ、Aは放置ですか・・?まあいいけど。

 倒れている男を観察してみる。俺が殴った部分、金属鎧がべっこりへこんでいる。

 俺の拳は何とも無い。まさか人が空を飛ぶとは思わんかった。聖闘士○矢か。おっさんのコスモが爆発しちゃったか。

 シラユキさんは、落ちていた枝でAをつついている。やめなさい、もどってらっしゃい。

 ダークエルフ少女は青い顔をしている。


「・・ご主人様、これからどうなさいますか?」


「心配しなくても大丈夫だよー」


 最悪、暴力で何とかなるだろう。なにせネットショップに1億あるからね。武器・兵器買い放題。


「・・わかりました。いざとなったら私が刺し違えてでも足止めします」


 悲壮な決意を固め、落ちていた石を握り締めるダークエルフ子さん。

 こわいこわい、やめて?そんな決意いらないから!


(しょうがない・・平和的に解決するか・・)


 シラユキさんは、落ちていたパンをAの口にギュウギュウつめている。どうやらかなりご立腹だったもよう。やめなさい、もどってらっしゃい。


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