番外編 低血圧子は不良と対決する②

 そのユウちゃんから昼休みにメッセージが飛んできた。


『ごめん。今日のメリーさん、ちょっと遅くなるかも』


『何かあったの?』


『日直の子が風邪引いちゃって。ゴミ出しして日誌書いたらすぐ行くね』


 担任教師から頼まれたユウちゃんが断りきれずに引き受けてしまう姿が目に浮かぶようだった。まぁ遊びに行くこと自体、昨晩ふと思い立ってわたしから持ちかけたものだったから、これくらいは甘受すべきことだろう。


『りょ』


『マコトさんが先に行くって言ってるから、一緒に遊んでいてもらって良い?』


 ケータイを操作しているユウちゃんの横で、春川君があさっての方を向きながらそう言う姿が目に浮かぶようだった。まぁ春川君を誘うという自体、わたしから持ちかけたものだったから、これもまた甘受すべきことなのだろう――が。


 春川君と二人か。


 戸惑いがないと言えば嘘になる。まだ知り合ってからそう時間が経っていないから。今のところユウちゃんを介しての友人付き合いしかしていないから。連絡先の交換もまだだし。ううん、違う。


 ――独り相撲なんてのはするもんじゃない。ボードゲームはみんなでやるものだからな。


 メリーズ・ラムの常連のひとりがいつかそんなことを言っていた。まったくもってその通りだと思うし、ボードゲームに限った話ではないとも思う。


『わかったよ。春川君によろしく言っておいて』


 だからわたしはそう返信して、ケータイをバックにしまいこんだ。


 さて、どんな放課後になることやら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る