01 ツバサ・ライジング
1、彼の出現
それは生誕ではなく出現であった。
それはただの現象であり、何かが創造されたわけではなかった。
夜の町を見下ろす少年、
何かが欠けた世界を安定させるための歯車として、ただ歯車として機能し続けることを己の役割として。
2、数合わせ
勇気啓区は、世界にとってさほど重要な人物ではない。
しいていうならばそれは……、
ゲームを成立させるために盤面に必要な、一つの駒として出現したというところだ。
同じ色の同じ駒の並ぶ盤面の上、駒に個性は必要ない。
勇気啓区は無色の駒。ただ、ゲームが成立するために、そこにあることを望まれただけの存在だった。
彼の駒が何かに使われることはない、ただの数合わせなのだから。
3、歯牙にもかけない存在
誰にも省みられる事が無い存在は、ある意味自由だ。
彼には何かをしたいと考えるだけで、用意にこなすことができる力が与えられた。
人によっては、才能、チート力と呼ばれるその力は、しかし勇気啓区をとりまく環境を考えてみれば、宝の持ち腐れであった。
ただそこにあることだけを望まれた無色の駒は、ゲーム盤の状態や勝敗に関与することはできないのだから。
4、物語と主人公
世界には無数の物語が満ちている。誰かを助ける為の物語、強大な悪を打ち倒す為の物語。勇気啓区にはそれらの物語を感知する能力と、それらの物語に登場する主人公、登場人物等を感知する能力があった。
ゆえに彼は、春の季節……初めて通うことになる学校に『在校生』として、登校し、その少女に気が付いた。
彼女は異世界を巡る物語に巻き込まれる人間であり、主人公なのだと。
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