第3話 何でもある店「滝畑屋」
外が眩しい程に明るいせいか、静かなそのおんぼろの店内は薄暗く見えた。
茶色く錆びたトタン屋根の店には、《滝畑屋》と手作りの看板が掲げられている。
「あのー・・・こんにちは」
店の入り口の時点で埃臭い。
小さなそのリサイクルショップは、所狭しと大型のタンスや机、扇風機や、価値のよくわからないお皿などの骨董品が並んでいる。
いや。並んでいると言うか、適当に積み上げらたりりしている。
「はいよ」
姿は見えないが、店の奥の方から、しわがれた男性の声が聞こえてきた。
ガタンと何かを倒した音が聞こえたかと思うと、1番奥に見えた大きな本棚の裏から、立派な顎髭をたくわえた老人がゆっくりと出てきた。
「何だ?お客さんか?初めて見る顔だ」
70歳くらいだろうか。それくらいには見えるが、腰もしゃんとしている。
シワだらけの顔で訝しげにこちらへ来た滝じぃと思われるその老人は、さち子をまじまじと眺める。
「まぁなんだ。ゆっくり見ていきなさい」
「あのー・・・。そこの扇風機が欲しいんですけど」
「あ?あぁ、構わんよ」
再び店の奥に戻ろうとしていた滝じぃは、さち子が指差した方を見てそう答えた。
「500円だよ」
「えっ」
あまりの安さに、思わずそんな声が出た。
確かに埃は少しかぶっているが、そんなに古いものには見えない。
「持って帰れるのかい?待ってなさい」
さち子の様子を気にする事もなく、滝じぃはそう言うと店の外に出ていった。
財布からお金を出して待っていると、ガタンゴトンという音と共に、台車を押しながら滝じぃが店の前に戻ってきた。
「ほれ、これに乗せて帰ると良い。まだ代わりはあるから、暇なときに返してくれたらええよ」
そんな親切な滝じぃは、500円を渡すとポケットにお金を入れて、扇風機を台車に乗せる事までしてくれた。
「ありがとうございました。まだ引っ越したばかりで色々足りていないので、お世話になると思います。花村さち子といいます。宜しくお願い致します」
そう言って頭を下げた。
「あぁ。店の看板でわかると思うが、私は滝畑だよ。またいつでも来なさい。大体なんでもあるから」
滝じぃは顎髭を撫でながら、優しいしわくちゃの笑顔でそう言った。
滝じぃは店の前から、さち子が見えなくなるまで見送ってくれていた。
さち子もそんな滝じぃに深く頭を下げてから、扇風機を乗せた台車を押して自宅へと戻った。
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