32
かげろうはひかりの横にひかりと同じように体育座りをして座った。(その前に、自分の隣の部屋である、よぞらくんの部屋のドアをノックしてみたのだけど、よぞらくんはなぜかこんなに遅い時間なのに、自分の部屋にいないようだった)
「なにがあったの? ひかりちゃん」
にっこりと笑ってかげろうは言った。
「うん。あのね……」
そう言ってひかりは自分の身に起こったことをかげろうに話し始めた。二人の幽霊(ホロウ)たちはその小さな手をぎゅっとお互いにつないでいる。怖い話をするときは、いつもこんな風にして、かげろうはひかりと話をしていた。かげろうは頼りない幽霊なのだけど、今朝のよぞらのように、あるいは今夜のひかりのように、かげろうはよく友達の、この世界にたった三人しかい幽霊(ホロウ)たちから、こうして(かげろうくん。かげろうちゃん。僕の、私の)話を聞いて、……と言ってもらうことが多かった。(かげろうは勉強や運動などの学校の授業ではあまり二人の役に立てなかったから、こうして友達の二人に話を聞いて、と言ってもられることはなんだか自分が必要にされているみたいで嬉しかった)
ひかりの話は今日の特別授業のことだった。
かげろうとよぞらがテストの成績が悪かったため(よぞらは点数が下がったため)ひまわり先生のお仕置きを受けている間(今日のお仕置きは『電気椅子』だった。すごく痛かったことをかげろうは思い出してその顔をしかめた)成績の良かったひかりはひまわり先生の言いつけ通り、映像保管室(通称、記憶の間)である映像を見て、その感想をひまわり先生に伝えること、と言う特別授業を受けていた。
そのひかりの受けた特別授業とは、『人類の戦争の記録』を見ることだった。
ひかりはたくさんのテレビに囲まれた薄暗い映像保管室の中で、その人類の戦争の記録を、かげろうとよぞらが地下で電気椅子のお仕置きを受けている間、ずっと一人で見ていたらしい。
それは、ひかりの『心』を無茶苦茶に破壊するのに、十分すぎるくらい、刺激的で残酷な映像の洪水だったらしい……。
かげろうはその話を聞いて、ぶるっとその背筋を震わせた。(ひかりはぎゅっとかげろうの手を握った)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます