25

 ジラはかげろうを連れて(小脇に抱えて)幽霊の街の中心にある広間にまで移動をした。

 そこにある大きな噴水(ギリシャ神話の神様たちのような彫刻が施されていた)の脇を通り、七色に淡く光る街の光の中を抜けて、ジラとかげろうは大きな駅(だけど造りはとても古風なものだった)の前に到着した。

 その駅の巨大な駅名を書いた看板には確かにかげろうの言った通り、『天の川銀河の街』と言う文字が書かれていた。

 なるほど。

 確かにここは幽霊の街ではなく、天の川銀河の街という名前が正式な名称らしい。これはどういうことなのだろう? ジラはかげろうを地面の上に降ろしてから、腕を組んで考える。

 ここは幽霊の街だ。

 幽霊(ホロウ)であるかげろうがいるのだから間違いない。(きっと、あの大きな建物の中にはひまわりもいるのだろう。そう思って、ジラはちらっと近くに見える巨大な中世の城のようなきらきらと七色の明かりが灯っている建物のことを見た)

 もしかしてこの地下都市以外の場所にも、幽霊(ホロウ)の街は存在しているのだろうか? たとえば、アンドロメダ星雲の街とか、ケンタウルス座の街とか、プレアデス星団の街とか、そういう街がこの星のどこかに、(たとえば海の底とか、氷の大陸のしたとか、あるいは空の上とかに)あるのかもしれない。

「うーん」

 ジラは悩む。

 その横ではかげろうはちらちらと駅にある時の止まった時計を見て、それから大きなお城を見て、そのあとでジラを見たりして、なんだか落ち着かない様子でいる。(きっと、帰る時間を気にしているのだろう。あのひまわりのことだ。徹底的に幽霊たちのことを管理、監督しているに違いない。それこそ、檻に入れて子供を育てるように)

『ジラ。物事を考えることは良いことですが、とりあえず、この駅が生きている駅なのか、あるいは死んでいる駅なのか、まずは確かめてみましょう』みちびきが言った。

「……うん。そうだね。確かにその通りだ」ジラは言った。

 よし。とりあえず悩むのはあとだ。

 まずは駅の中に移動用、あるは脱出用の電車があるのか、確認する。

 そう決心すると、ジラの行動は早かった。

「かげろう。移動するよ」

「え? あ、はい……」

 かげろうがそう言っている間に、すでにジラはかげろうを脇に抱えて、地下に吹く冷たい冬の風よりも早くに、もう移動を開始していた。

「わー」

 かげろうは、そんな高速で移動する世界を見て、その目と心を思わず輝かせた。(その際、かげろうの黄色いコートの中にある、かげろうの抜けてしまった頭のねじがぼんやりと青白い光を放って輝いていることに気がついているものは誰もいなかった)

 そのままジラは改札をジャンプして抜けて駅の構内に移動をした。

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