ショッピングエリア_7

「よし、セーバル。もうこの服、全部持っていきな!」


 店員がセーバルが試着した服を紙袋に入れ始める。


「いいの!?」

「いいの!もうおねーさんの負けです!完敗です!ありがとうございました!」


 店員がまとめた紙袋を隊長に持たせた。


「ありがとう!」

「その代わり、これ着てまた遊びにきてよね!」

「うん、約束!」

 

 セーバルが店員と指切りをした。


「ところでサーバル、あんたさっき何見てたの?」

「オモシロTシャツだよ!」

「この店そんなのまであるんだ…」


 カラカルが苦笑いする。


「ちょっと待っててね、カラカルに呼ばれる前にイイの見つけたんだ!」


 サーバルがTシャツコーナーに走っていき、すぐに戻ってきた。


「これこれ、どう?」


 そのシャツには、少し目つきの悪い男性がライフルを担いでいるイラストがプリントされており、その上に『TSUYOI BOSS』と大きく書かれていた。


「ぶっは!これおにーさんじゃん!!つよいボスってアハハハハ!!う、ウチこんなのあったんだ!!あひゃひゃひゃひゃ!!ハァ…くるしー!」


 店員がオレとシャツを見比べ、笑い転げる。


「やっぱりキョウに似てるよね!」

「た、確かに!私たちは武器持ってるところも見てるからなおさらキョウに見えるわ!」

「え、そんなに似てるか?」


 自分ではそれほど似てないと思うのだが。


「ちょっと同じポーズで立ってみて!ここはもうちょっとこう…顔の角度はこんな感じで…はい、できた!」


 カラカルにプリントと同じ立ち方にさせられる。

こうなったら表情まで寄せてやろうか。


「ぷふっ!ご、ごめんなさい」

「ふふッ…キョウ、こ、こんなのズルいわ…!」

「ぶひゃひゃひゃひゃ!死ぬ!笑い死ぬ!おにーさんに殺される!ゲホッゲホッ!」


 アードウルフやトラまで笑いをこらえきれずに噴き出し、店員は余程ツボにはまったのか肩で息をするほど笑った。


「ほら、キョウ、そっくりでしょ!」


 カラカルがカメラで写真を撮り、ギャラリーで見せてくれた。


「くふッ、確かに似てるなこれ!」


 写真で見ると思ったより似ていて、自分でも笑ってしまった。


「はぁ…はぁ…おにーさん、マジごめん…お詫びにおにーさんにちゃんと似合いそうな服いくつか見繕ってプレゼントするわ…」

「結局服選んでなかったんでしょ?良かったじゃない」

「まあ、そうだな。プロに選んでもらえるのならありがたい」


「じゃあ2回戦開始だよ!みんなおにーさんに似合いそうな服もってきな!」

「ちょっと!?」

 

 唐突に、今度は自分が様々な服を着させられる側になってしまった。







「ありやとござっしたぁー!また来てねぇー」


 オレの着せ替え大会が終わり、みんなが選んでくれた服が入った大量の紙袋を持って店を出る。


「騒がしい店員さんだったな…」

「でも、センスは本物よね。似合ってたわよ」

「ああ、そうだな…」


 フレンズ達が服を選んでくれたのだが、男性の服を見る機会が少ないためか、どうしても女の子っぽい服になってしまうのだった。

フレンズが選んだ服では、カラカルとサーバルが悪ふざけで選んだ『つよいボスのコスプレ』が一番マシという有様だったのだ。(店員が笑死しかけたのは言うまでもない)

せっかくもらったのに申し訳ないが、店員とアリサが選んでくれたもの以外の服の出番はないだろう。


 最終的に、店員が真面目に選んだ黒いジャケットとジーンズで落ち着いた。

自分でもなかなか悪くないと思うし、謎の鎖などはついているが、着脱はできるので邪魔なら外せる。

アリサも無難に着られるものを選んでくれた。

明日以降、遊びに行くときは着てみよう。


「あー、面白かった。次はどこに行く?」

「いや、そろそろ戻った方がいいかもしれんぞ。もうすぐ夕方だ」


 時計を見ると、17時になろうとしていた。


「ほんとだ!じゃあ、ホテルに戻ろっか」

「この荷物をなんとかしなくちゃね」


 隊長ほどではないが、オレも紙袋のオバケになりつつある。

ホテルに戻り、夕飯までは荷物の整理をすることになった。

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