第31話 いい名

 思えば随分遠くまで来た。僕は現在、故郷から海を隔てた寒冷地にいる。

「もうすぐオーロラが見られるわよ、××」

 遠くのキャンプから、湯気の立ちのぼるマグカップを二つ持った女性が呼ぶ。僕が現地で知り合った方の一人で、今は彼女と行動を共にしている。

 カップに注がれたコーヒーを飲んで、彼女と一緒にキャンプへ入る。

「××、オーロラを撮ったら、次はここよ」地図を指差して彼女は微笑む。

「ねぇ、どうして君は僕をアシスタントに選んでくれたの?」

 僕はふと気になって、彼女に質問する。すると彼女はまっすぐ青い瞳で僕を見て

「あなたの名前、私の国だと縁起がいいから」いたずらに笑ってくれた。

 僕の名前を肯定してくれる人。照れつつ僕が笑うと、白い息がふっと上がった。

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