第24話 素敵な(前編)

 「それじゃあ、ユキによろしく伝えてくれ。メリークリスマス」

 通話を切る。電話越しからも妻の声が浮かないことは感じ取れた。ため息一つ吐くと、俺は装備を整えて装甲車に乗り込んだ。

 俺の職業は「異形狩り」、いわゆるハンターだ。ただし俺が獲物とするのは、人類史において“怪物”と畏怖されてきた化け物である。世界中に潜むチュパカブラやネッシーなどの生物を実際に狩り、物好きな顧客に法外な値で売りつけている。

 車内のカーラジオから現地のクリスマスソングが流れる。今年のクリスマスも母国に、家には帰れなくなった。最後に息子のユキの姿を見たのは六年前、俺自身も現在のユキがどうなっているかは知らないし、ユキも俺を父親と認識できない筈だ。

 今日のターゲットリストに目を移す。今宵の標的は、“サンタクロース”。

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