第28話 アンコール

 大人になってから気付いたことがある。それは、気兼ねなく遊びに誘える友人の存在は貴重だ、ということだ。

 昔は俺にも友人がいた。夕方ごろ会って、くだらないことで遊んで帰る。その話を昼休憩中、後輩に話したところ、

「え、そういうのはいなかったですねー。先輩、幽霊と遊んでたんですか?」

——午後の営業を一通り終えて、俺は車で来た街を観光する。空が茜に色めきたつ。

 ふと、通り過ぎようとした公園の向こうに人影がいた。瞬間、俺の記憶の奥、彼らと遊んだ思い出が鮮明に蘇る。そうだ。車を降り、あの時のように彼を呼んだ。

「おーい! ぺとりこーる!」

 人型の靄は俺に気付き小さく手を振ると、見た目通りに雲散霧消してしまった。

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