十行小説

第28話 さざなみ

　皆さんはサーファー界の英雄こと、本谷（ほんたに）漣（れん）をご存知だろうか。小さな離島に生まれた彼は、幼いころからそのサーファーとしての頭角を現していた。流れていたぼろ板で荒波を乗りこなした話は、彼の才覚を証明する逸話として有名である。

　本谷は十五歳のとき、プロサーフィン連盟に所属した。最年少ということもあり当時はメンバー内から疎まれていたが、彼が十八歳の折、サーフィンの国際大会で史上最高点を出すと、彼の名は一気に世界中へ轟いた。

　若きエースとして期待されていた彼だが、本谷が二十三歳のとき。彼はバカンスで訪れていたビーチで、溺れていた少年を救いにいった。少年は無事だったが、本谷は追ってきた高波に呑まれてしまった。全世界が衝撃をうけた急逝だった。

　彼の命日は「さざなみ忌」と称され、今でもファンが彼の死を悼んでいる。