第14話 墨

 現在の書家の中で最も著名な人物といえば、多くの人は海原うなばら泰晴たいせいの名をを思い浮かべるだろう。彗星の如く現れた彼は、その生き生きとした筆使いとダイナミックな文字を書くことで、一躍有名になった。

 今回私は、今まで何度もテレビ取材や雑誌取材を断ってきた海原泰晴の、独占インタビューに成功した。そこで、作品の披露もしてくれることになっている。

 当日。海原泰晴は想像していたよりも好青年だったので、初見は驚いた。彼の作品は“墨”にこだわっていることも聞き出せた。

 そして、いよいよ作品披露の時間になった。巨大な半紙をセットしたが、肝心の墨と筆がない。すると海原は、工房の冷蔵庫から「タコ」を取り出すと、思いっきり握った! タコが墨を吐く! それを半紙に沿わしている! なんてことだ!

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