第31話 小説家、小説を書く

 初めて小説というものを書いてから、早三年になる。当初はなんの特殊な境遇であったり、一生の語り草になるような体験談もない私が、「執筆」などできるものだろうかと、恥にも似た不安を抱えていた。しかし、いざこうして筆を進めていたら、不安はあれども、喜びもまた感じられるようになった。特殊な体験に関しては、むしろ小説を書き始めてから起こるようになっていた。

 私はもう丸三年も小説を書き続けているが、目立った賞などに入選した経歴はない。それでも、ウェブサイト上に作品を投稿すれば、読んでくれる人がいる。評価してくれる人がいる。その存在が、小説を書いて良かったという実感に繋がった。


     ……もうすぐ夜が明ける。さて、次はどんな物語を書こうか。

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