第11話 継子

えーと侍女たちの控え室ってどっちだっけ?

慣れない宮殿の庭で僕は早くも迷子になってしまったようだ。


誰かに道を聞かないと。


すると迷子なのか一人の少年を見かけた。年は10才ぐらいであろう、身なりはしっかりした綺麗な服を着ている。


こんなところに子供?

まぁダメもとで聞いてみるか?


「おーい」と呼びかけると


少年は興味シンシンという感じで僕に近づいてきた。


「なに?お姉ちゃん?」


「道に迷ったんだけど、宮殿の台所はどこら辺かな?」

おそらく侍女は今頃昼食の準備をしているはず。

お腹減ったな。朝食べてないし。


「あっちのほうだよ?」

と答える少年。


「ありがとう」と応える自分は少年の目に涙が光っているのに気づいてしまった。


「ありがとう、ついでに、僕になにかできることあるかな?」

とさりげなく助力をしてあげようと思うと、少年は僕のスカートの裾を掴んで。


「本当のお母さんになってほしい」と言って泣き崩れた。


いろいろ身の上話を聞くとどうも、貴族の夫婦の継子らしいことがわかる。本当のお母さんは魔王軍に殺されたらしい。


僕にできることは、

「うん、お母さんになってあげるね!」と精一杯の笑顔で応えることだけ。


なんか本当に僕は女の子化しているな……。でも少年に罪はないし、いいか?


僕が侍女の方にいこうとすると、スカートの裾を掴んではなさないので、手を繋いで一緒に行ってあげることにした。


少年は、はにかんでニンマリと笑ってくれた。


侍女の控え室を見つける僕。


部屋に入ると開口一番飛んできたのは嫌味だった。

「あら、子連れ?」と言ったあとに

「インラン女」と小声で聞こえるように付け加える。


少年のためにもここはがんばらないと。聞こえないふり。

「サラさんって方はいらっしゃいますか?」

と聞いてみる。


「まったく何様のつもりなんだかっ」と呟いたあと。

「私がサラですけど、姫様がなんの御用でしょうか?」

と勝ち誇った顔で彼女は私に要件を尋ねた。


怖い。


とても協力を頼める空気じゃない。と冷静になる僕。

「いえ、なんでもないです。失礼しました」

と告げ去ろうとすると。


「お待ちください」

とサラは引き止めた。


「まさか、その子が光の勇者なのですか?」と震える声で尋ねるサラ。


「そうです、私の子です」となんとなく嫌がらせする僕。


「光の勇者は普通の子の10倍のスピードで成人すると聞いております」

とサラは言って、

「これで世界は救われましたね」と力なく嬉しいという気持ちを装った。

そういうことか!


「内密の話ではまだありますが。はい、一歳です」

と嫌がらせを続ける僕。サラはきっと王子と僕が、できちゃった、と思っているはず!


口元を歪めるサラ。

「御用はそれだけですか」

と不満をつい口に出すサラ。


「はい、みなで喜びを分かち合いたいと思いまして、つい」

と応える。


あースッキリした。


「僕のこと、子供って言ってくれてありがとう!」と少年。

「名前つけてくれるかな?今までの名前はもう僕いらない!」


と言ったので僕は

「ヒロシ」って名前はどうかな?と前世の名前を彼に贈ってあげることにした。


僕はその時、この小悪魔に騙されているとはついぞ知らず、

あとでその好意を裏切られ、後悔することになる……。


だって、まさか魔王軍のスパイがこんな少年だなんて思うわけがない。


僕はこのヒロシに貞操まで一つ間違えば奪われるところを後にマリス王子に救ってもらうことになる。


話を戻そう。


さて、自分の部屋に戻ろうと思い、僕はこの少年をすっかり信用して

彼を部屋に招き入れ、コッソリと匿ってあげることにしたのだ。


だって継子として酷いイジメを継母から受けていると知ったら、一人で帰すなんてできるわけがないじゃないか。













































  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る