第8話 転生

「姫!目を覚ましてくださいっ」


んん、姫って誰のこと?

あれ?唇が優しく吸われた?ちょっと待て俺のファーストキスが奪われた?


目を開けるとそこには黒い美しい瞳をした純朴そうな少年の顔。

少年は

「愛の口付けで呪いが溶けたようですね!良かった。もう助からないかと。信じられますか?姫は魔王の呪いにかかり、醜い男にされるところだったのです」


「俺は男だ。おい、ふざけるなっ」


もう一人枕元から見えるのは、見るからに賢者風の杖を持ったロン毛の男。

「姫はまだ呪いから完全に解放されたようではないようだ、だが忌まわしき運命から完全に解放されるのも時間の問題。」

と賢者がいう。


「アイ=ユニバース、どうすれば姫は私を恋人と思い出してくれるのだ?」

と少年が言う。


「王子よ、愛のみが呪いを解きます。時間をかけて姫を慈しんでおやりなさい」

なにを言っているだ?この賢者?おいふざけるな、俺はBLなどもう沢山だ。

こうなったら、証拠を突きつけてやればいい。


「おい、王子とやら。俺には男のシンボルが付いている。それを確かめれば……」

と言いかけるとその少年は顔をやや紅潮させながら、


「姫失礼」と断る。

彼の手が優しく股間を触れる。あ、あれ?


あ、あれ。や、やめて。もうそんなにくすぐらないで!


え、な、ない。ないの?

「ミヒロ=シルィリア姫。失礼いたしました。少なくとも体は呪いに犯されておりませぬ」

といいながら少年は安心したのだろう、僕をふわっと抱きしめてくる。

僕は自分の胸が膨らんでいることに今気づく。


「良かった、本当に」


「私の名前は覚えていますか?」

まさかと思うけど?


「麻里なのか?」

と意味不明な連想する僕、いやもとい私。

もう、男の子じゃないんだ。女の子になっちゃったんだ。


「はい、マリスと申します。……ああ、女神よ感謝します!」

こいつ、麻里の転生した姿か。となんとなく僕は思う。


僕はどっと疲れて、いや、もうこの一人称はやめるべきなんだろうか?

いや、僕でいいや、面倒だから。


「僕は麻里のことなんか認めないんだからね!」

と拗ねてみせるとマリス少年は困った顔をして


「君が男にされなくて本当に良かった」

という。


「どうも僕状況が飲み込めないんだけど、死ぬわけじゃないんだから、男のままでも全然問題ないよ」


むしろ転生するなら、また男が良かったのに。

あの気違いじみた日本という独身罪がある「近代国家」だから男性として生きることをあきらめただけで、新天地なら話は別だよね。


「そんな……。僕たちは結婚して、光の勇者を子として授かる。それは女神が与えた祝福。光の勇者だけが魔王を倒せるというのに!」


「王子、姫を愛しておやりなさい!それも出来るだけ早くだ。幸運の三日月の日に真実の愛で結ばれた子だけが光の勇者になる。我々には時間がない。それに、呪いを完全に解くためにも必要なことなのだ。もう子供ではないのだから、意味はわかるね」

と賢者がとんでもない事を言った気がした。


おい、ちょっとまて。このままだと麻里と性別逆転で初夜を迎えることになるのか?

マリスが麻里だったとしたらだけど。


いや、マリスの中身がエロ親父みたいなゲスい男の可能性もあるわけで、断じて認めんぞ!こんな展開。


「姫、まずは湯浴みをなさってください。落ち着いたら二人で話しましょう」

とマリス王子。


うーん、お風呂行くのはいいのだけど、そのあとマリス王子間違いなく僕を抱くつもりだよね?それはちょっと抵抗が……。


そうこうすると侍女がやってきて僕をやや強引に風呂場に連れて行こうとする。

「誓って君に危害は加えないよ」とマリス。


結局僕はヤツが悪い人間には思えなかったので素直に風呂に行く事にした。
















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