ふんしょかんのおしごと! ~漫画以外の本は燃えてしまえ~
おいしいカレー屋さん
第1話 羽走本大好きとは、はばしりぶっくめーかーと読みます。えぇ、こんな名前は付けるのはふざけているとしか考えられません。
本。
本。
本。
右を見ても本。左を見ても本。上も下も本。
どこを見ても三百六十度、紙で出来た束が連なるばかりで、脚を踏み入れると言う発想にならないくらいの紙の絨毯が私の心を蝕んだ。
そんな閉じようも無い家に生まれてしまったのが、生涯の運の尽きだったと言える。
私の両親は、子の目線から見ても異常だった。本で得た知識ばかりを集約しているせいで考え方が普通では無く、見た本の内容を頭に入れてそれを実行した。
ダイエットの本を見れば三十キロ痩せ骨みたいになり、健康趣向の本があれば顔に梅干を貼り付け生活し、駄洒落の本を読めばアメリカンになり、教育本を読めば毎日八時間私に勉強させた。
挙句ほうきにまたがって空を飛ぼうとした事があるが、それは骨を折るだけの事態で済んだのが幸いだった。
そうして捻くれた教育を受けて育ってきたのが、羽走本大好きと言う名を与えられ生を受けた私だった。こんな名前に仕立て上げてくれたおかげで生粋の本嫌いへと成長した。
小さい頃から絵本は投げ捨て、小説は紙飛行機に、漫画は楽しく読ませていただいて、エッセイ本は密かに下に追いやり本の絨毯へとリサイクル。
親不孝と散々言われたが一体どの口が言っているのか、その時私は本に入れた栞を抜き取られた時の様な不快な気持ちになった。
そんな険しい人生であっても、雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫な体を持ち欲は無く、決して怒らずいつも静かに笑っていたそんな私は、殺人的な本の雪崩に遭遇し意識を飛ばした。
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