見えない彼女の行くすえ
丸尾累児
第1部:透明人間、あらわるあらわる!
第1部プロローグ
はじめてのカノジョ①
「やっぱし早く着すぎちゃったよなあ」
と、ひとり駅前の広場で時計を見ながら一言。
オレの名前は、三田村誠一――現在、初めての彼女『春森いちず』と、初めてのデートの待ち合わせ中。
左の耳元あたりでリボンで束ねられ、肩口から落とす茶色の髪。バッチリとした横長い一重の目は、細身の身体と相まってカワイイっていう雰囲気を醸し出す。
それが春森だ。
動物でたとえるならば……猫?
少しだけ癖っ毛のあるヒマラヤンみたいな。ともかく、春森は物静かで上品さのあって、カワイすぎるってぐらいカワイイんだよ。
……にしても、遅いなぁ……ってまあ、オレが単純に待ちきれなくて、早く来ただけなんだけどね。
そんなこと言ってたら、右側の方からトコトコと駆けてくる人影を発見。
姿形から察するにあきらかに春森だ。しかも、オレを探しているのか、あちこちを見回している。
唐突に目が合った瞬間、春森はこっちに向かって走ってきた。
嗚呼、なんかスゴく新鮮でうれしい感じがする。
「は、春森……き、来てくたんだね?」
「ごめんなさい、遅くなってしまったみたいで」
「ううん、ぜんぜん大丈夫だよ! オレ、待ってるの慣れっこだからさ」
……って、なんかあざとらしいこと言っちまうし。
ダメだろ、オレ! もうちょっとしっかりしろよ――ま、ま、まあデートはしっかりこなせば結果オーライだよな。
でも、マジで緊張する。
春森に恥かかせるようなことしたら、オレどうしよう? 絶対死んじまいたくなるになるに決まってんじゃん?
ってか、ここで最初に服装を褒めておくべきなのか?
春森の今日の格好は、五月の陽気に似合う乳白色のニットケープに薄緑のワンピース。
腰のあたりまで長いベルトが付いたショルダーバックと、杏色のショートブーツはどう見てもお出かけ用って感じに彩っている。
オレのためだったら、マジうれしいな。
「三田村君? あの、どうかしました?」
なんて考えていたら、いつのまにか春森が顔をのぞき込まれてるし。当然、とっさのことにビックリしたオレはおもわず仰け反り返っちまったよ。
「大丈夫ですか、三田村君」
「ああ、うん……。ゴメン、ちょっと考えごとしてた」
「なにか思い悩んでることでもあるんですか? 私でよければ相談に乗らせてください」
「いや、そういうのじゃないんだ。これから、春森とどんなことをして遊んだらいいのかなぁ~なんて考えてただけだよ」
「それなら、私も色々考えてきました」
「……えっ? そうなの!?」
「はい」
と発した途端、春森は顔を伏せて赤らめた。
しかも、その恥ずかしがる表情がたまらない! 口元で手を合わせて、モジモジする仕草が妙にエロく感じちまうんだもん。
ってか、どんだけ飢えてんだよ、オレは。
「はい。三田村君との初めてのデートだから、私もどんなところへ行ったらいいのかわからなかったので、とりあえず行ってみたい場所を考えてみたんです」
そんなこと言われて、オレってば超幸せ。
まさか春森が、そんなことを考えててくれただなんて思ってもみなかった。
「オレもっ、オレも。いやぁ~楽しみすぎて明け方まで寝れなかったよ」
うん、まあウソなんだけどね。
本当は大事を取って早めに寝たし。
なので、オレの眼はバッチリ冴えてる。春森とのデートに必要な体力じゅうぶんあるってわけさ。
「とりあえず、約束してた映画を見に行こうよ」
と言って、春森を連れて歩き出した。
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