紫陽花、残り香に振り向く。

刺繍の白花びら


アナベルという名の、紫陽花のなかまがいるのです。

白いレースの刺繍のハンカチーフのような。

小さな花びらの集いは、みっつだったり、よっつだったり。



カリフラワーに襲われそうな、もこもこ具合。

泡泡のシャボンみたいに、いたずらなクリーム色。

小さなどうぶつだったら、潜って遊んでみたくなる。

くも、メレンゲ、ふかふかわたあめ!



和の紫陽花は、あまり香りがしないのに

このアナベルはいい香りがする。

えっとね、欧羅巴ヨーロッパの匂いなの。

秘密の香水、夕方の気配、待ち合わせ。



夢の中の少女の日傘のように、くるくるとそれは回って。

まるでルノアールの絵画の少女みたいに

ふわりと午后の優しい時間を作り出す。





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