怪談
永人れいこ
第1話 怪談Ⅰ
小さな黒い車が暗い夜の山道を走った。
車の中にも外と同じく暗くて周りを見てもほとんど何も見えない。
「で?」
僕が運転席に座っていた。チラッと目を前の道を外して隣の助手席に座っている佐美子を見た。
彼女は相変わらず綺麗だ。ビックリとするほど長い黒い髪が何もないように右肩の上に乗せた。
彼女は彼女の特徴の青い目で僕に見返した。何度もあの目を見ると「世界の七不思議の一つ」としか頭に浮かばない。
「運転中、怪談なんて聞いても平気?」
「平気、平気」
それは、真実だ。僕は子供の頃からずっと怪談が好きでよく聞いたり読んだりした。映画にもホラーのは一番好きだ。
彼女は笑った。
「なら、特にいい話あるよ」
佐美子の笑いが邪悪にになった。彼女の真っ白なワンピースドレスから出ている細い腕に鳥肌が立っていると見えた。その佐美子を見ると僕も鳥肌が立った。
「何年前、この同じ道である事件があった。覚えている?」
「そういえば、何かあったよね」
彼女の話を聞きながら、僕が目の前の暗さに眺めた。両側に手のように枝が伸ばしていた。何を捕まえようとしているだろうか。
「新聞によると、恋人の二人が旅行から帰るのが遅くなってしまってこの道を近道として使えようとした」
「そうね。僕たちと違ってこの道よくわからないなら危ないよね。特に夜」
「確かに新聞によるとあの2人は速く知れぬ道を走って急な曲がりに転んでしまった」
その言葉を聞くと無意識に自分の速度を確認した。やや速い。足をアクセルから少し放した。
「でもね、友達から事故の理由が違うと聞いた」
「何の理由?」
「幽霊と出会った」
怪談だから幽霊が出るのが当然だけど、どんなように現れるのがいつも違う。他の話とよく似ても何か特徴あるはずだ。
「友達の話によると、あの2人がこの道に迷ってしまった」
僕は身を乗り出して上の方に向いた。木の手が多くて空が見えない。たまには枝の間に月が一瞬に見える。暗い。1人でこの森に迷ってしまったら死ぬぐらい怖いだと思う。けれど、この道は一つしかないから運転すれば迷子になるわけがない。
「どういうように迷ってしまったかと思ってただろう」
彼女が僕の心が読めるように聞いた。
「まぁ」
「それはこの森の中に死んだ人の霊気が強すぎて黒い霧のようになった。そして、霊気だから、あの霧は外限りじゃなく頭の中も曇らせる」
「恐ろしいものだね」
「その迷ってしまった恋人たちが次はどうするかケンカを始めた。彼は道を進んだらいつか出ると思ったが、彼女が止めて道が教える人を携帯で連絡した方がいいと思った」
「カーナビは?」
「私たちと同じく、森を入るとトンネルのように見える。地図あるけど、繋がらないから本当かどうかわからない。特にあの霊気で頭が曇っている状態で」
「なるほど」
そういうなら、両方の考えは悪くないと思った。僕もあの状況にいれば同じものを考える。
「で、そのケンカ中、道の脇に女性の姿が現れた。この夜遅く誰もいないはずの森の中に誰かの歩いている姿を見ると誰も怪しいと思う。けど、霧のせいで、怪しいどころか喜んでいた。道を教えらるかなと思ったから」
来た。
僕が微かに笑った。何度もこんな怪談が聞いたことがある。次はどうなるかだれも察せるはずだ。
「彼が車を女性の隣に止めた。女性は長い黒髪と白いワンピースで車の方に振り返らない。彼女は窓を開けて「ごめんください」と声を出した」
もう遅くなって僕の前の道に霧が覆ってきた。話と同じだ。鳥肌がまた立ってきた。
「あ、やっぱり辞めようか?」
佐美子が急に僕に聞いた。彼女の顔をチラッと見た。怖いからかなと思ったけど、彼女の顔には恐怖じゃなく楽しみが見えた。
「どうして?」
「この後は怖すぎて、交通事故になるかもしれない」
「いいよ、別に怖くないよ」
それは少しの嘘だ。たしかに完璧に怖いと言わないけど、この森の中に同じ設定の怪談を聞くとドキドキになる。
「わかった。けれど、怖いなら教えて」
ごめんけど、佐美子の怪談はそこまで怖い話じゃない、とこっそりと思った。
「「ごめんください」と、彼女が声を出した。その時女性がようやく車に振り返った。「どうかしましたか?」女性が2人に聞いた」
「え?幽霊じゃない?」
「さー」
彼女は悪戯っぽく笑った。
「「ちょっと迷ってしまいました。一番近い町はどちらの方ですか?」と彼が女性に聞きだした。答えはただ「そっちの方です」と、女性が前の方に指差した。彼女が女性に乗せてほしいかと聞いたけど、女性は笑いで断った。それで、2人は女性を後にした」
道を覆っている霧が濃くなってきた。
「じゃ、幽霊はどこだ?」
「ここだ」
佐美子が急に僕の首を噛んだ。
「辞めて、運転中だよ!危ない!」
僕は笑いながら彼女を押しのけた。彼女は邪悪な笑いで僕から離れた。
「美味しい」
「あの怪談は全部僕の首を噛むためなの?」
「そうよ」
「この世界の一番恐ろしいものは君だ」
それは誉め言葉のように彼女が大きな笑顔で外を眺めた。長い間に僕たちがフロントグラスに越えて森の霧で覆っている道を静かに見ていた。彼女の顔が真面目になってきた。
「だけど、本当だよ」
「何が?」
「この話」
「じゃ、終わりはどうなる?」
「気になる?」
「もちろん」
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