第20話 戦国武将の転職相談

「いらしゃいませ。今日はどのような悩みですか?」


 AIの妖精ルナが健康コンビニ<絆>のPOSレジの上に立体映像ARとして浮かび上がる。

 黒いGパンと白いTシャツ、赤いスタジアムジャンパーを着た男が椅子に座っている。

 短い黒髪で視線が鋭かった。


「転職相談になるのかな? 俺はずっといくさばかりしてきたので、平和な時代に何か出来ることはないかと探しているというか……」


 いつも即断即決の真田幸村にしては歯切れが悪い。

 

「そうですね。特技は何ですか?」


 ルナは驚くこともなく優しく尋ねた。

 

「そうだな、前線砦の構築とか、弓、槍、鉄砲、騎馬など武道全般かな。居合いとかも得意だな。物資の調達とかは三成の得意だし、俺は苦手だな」


「あ、それだと土木建築全般の仕事もできるし、個人道場を開いて武道師範も可能ですね」


 ルナは真面目に答える。


「でも、何か俺しかできないことはないかな? 俺しかできない仕事というか」


 幸村は独特のこだわりがあるようだ。

 やはり、真田幸村である。

 目立ちたがりやである。

 結局、戦場の華になりたいのかな?と石田三成なら優しく突っ込むだろう。


「そっか、なるほど、あ、それならいい仕事がありますよ。実はこのコンビニの隣に温泉施設が出来ることになって、その施設デザインとか考えてほしいです。うん、きっとあなた独自の、あなたにしか出来ない仕事になると思いますよ」


 ルナはにっこりと笑う。


「そうか。それは面白いかもしれないな」


 幸村は乗り気なようだ。

 思わず口元が緩んでいる。

 後に、この温泉施設は<真田丸>と呼ばれて、コンビニ家族たちの生死を分けることになる。

 AIの妖精ルナの深謀遠慮であった。

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