中編 不祥事の代償
「おはようございます」
勇者レオナルドが朝から訪れたのは和菓子屋『平和堂』であった。
魔王を撃退したその日からこの店で『勇者饅頭』をレオナルド公認で売り出す事が決まっており今日はその最終チェックに来たのだ。
「あぁ…」
「どうしたんですか?元気ないですね、ところで勇者饅頭の試作品どんな感じですか?」
店主は溜め息を吐きながら告げる。
「実はな…販売を止めることにしたんだ」
「えっ?」
肩を落として答える店主にレオナルドは耳を疑う。
売り上げの2割をレオナルドが受けとる契約で、魔導機械の導入資金の半分を支払っているのだから…
「な…なんで急に…」
「君が起こした不祥事だよ、あれのせいで君のイメージが大幅ダウンしたのは知ってるだろ?」
「で、でも饅頭にはなんの問題も…」
「それで販売して、女に暴力を振るう男の饅頭が売れると思うのか?」
「うっ…」
「言い過ぎたな、悪い…」
「いえ…」
レオナルドはそのまま店を後にする…
次に向かったのはレオナルドの師匠がやっている剣術道場であった。
「あれ?看板がない?」
道場の入り口に掲げられていた筈の看板が外されているのに違和感を覚えながらレオナルドは中へと入っていく。
「師匠?」
「おぅ、お前か」
そこに居たのは胴着を着て座禅を組む師匠であった。
朝日が差し込む道場は明るい筈なのに何処か寂しげな雰囲気を晒し出していた。
「表の看板が無かったですがどうしたんですか?」
「ん?あぁ、実は道場止める事にしてな」
「えっ?なんでまた突然?」
「まぁ…なんだ…入門生が一斉に辞めることになってな」
「まさか、俺のせい…」
「そんなに落ち込むなって、元々一人で気楽にやってたんだ」
「で…でも師匠…」
「それにな、お前は誰にも出来ない事をやり遂げたんだ。確かにあの件は失態だったかもしれないが、こんな事で騒げるなんて平和な証拠だ。お前はその平和を勝ち取ったんだもっと胸を張れ」
「はい、師匠…」
俺は師匠の道場を後にした。
悪いことをしてしまった。
そう考えながらも勇者レオナルドは次の目的地である王城へ向かうのであった。
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