第21話 アイスクリームのおじさん
「ラスエル、お話があります」
「はい!」
「お父さんは震災孤児院を支援してるんだけど、(*2031年には南海地震および南南海地震が起き、津波で多くの家屋が倒壊、また富士山が噴火して首都は神戸に移っている)時々顔を出してアイスクリームを配ることにしてる。一緒にお手伝いしてくれないかな?」
「まかせてください!」
サラマンは徳島で有名になったファーレというイタリアンジェラートやさんから大量にジェラートを買い付けて(ここのバニラが絶品である)、大学生ボランティアと一緒に神戸・広島・岡山と孤児院を回っていくのだ。
ジェラートカーでの到着を見た孤児院の子どもたちは、
「アイスクリームのおじさんがきたー!みんなーアイスクリームのおじさんがきたよう!」
「アイスクリームっていうんじゃないよ!あれってジェラートっていうらしいよ」
「アイスクリームはアイスクリームだい!」
一斉に駆け出すのであった。
紺のスーツと赤のネクタイをしめたサラマンとラスエルは、
「よしよし、並びなさいねー2列、2列だよー」
「あ、こら、喧嘩しちゃ駄目だよ。割り込みは禁止ですよ」
「ならんでくだちゃい!」
「アイスクリームのおじさん!3つのせ頼んでもいい?」
「いいとも!トリプルを頼むが良い!」
「「「ひゅ~~~~!!!」」」
孤児院の保母さんや院長が出てきて
「おぉこれは山本さん、すみません、子どもたちったら」
と言って、スーツ姿のラスエルを見た。
「ん?お子さんですか?」
「あらまぁ、可愛らしい」
「おとうさんのおてつだい!」
群がる子どもたちをエンヤコラドッコイショ皆で整列させて、ジェラートを配り終えた。サラマンは自分の会社のメンバーを呼んで、孤児院でも中学生になったものについて、今後の進学と就職のことを話しさせていた。つまるところ、サラマンは震災孤児向けに奨学金財団を設立していて学力のあるものに絞って奨学金を出しているのである。社長がわざわざ出向くのも未来の人材を育てようという話ですね。
「お父さんはちょっと子どもたちに、勉強とは何かを教えてくるから。ラスエルはジェラートもらっておいで」
「え~やだ~い!おとうさんと一緒に食べるのが美味しいんだい!」
「そりゃあ、困ったなぁ」
「ラスエルを連れて行くといいことあるよ!使徒モードに入るね!」
「使徒モード?」
その後、サラマンの講義を見事に補佐し、周りを感嘆させた、見た目3歳児の使徒ラスエルの姿があったのであった。
つづく
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