例えばそれは
例えばそれは水の中
空気
口、喉、鼻、目を
精一杯あける
水が嫌な部分に
濁流のようにながれこむ
酸素など
もう入る隙間もない
口を塞ぐには遅い
腕は縦横自由
自由という恐怖
掴んで
離したくない
にぎりつぶしてしまう
限界と共に掴んだものは
ジュバッ
音を立てて
少数の泡と化す
脚は主に前へ後ろへ
ザァ、シュワァ
もう限界だ
そして
私を通しているだけで
ただの水の中
私がいてもいなくても
ゴポッ
ああこういうことか
こんなことなら
溶けてしまいたかった
そのまま溶けて現れることなく
誰からも見えることなく
こんなことなら
はじめから。
遠くから見る
ぞくぞくするほど美しい
額縁はない
どこまでも広がる青と差し込む光
そこに私
ばかだった
あれほど欲していたものは
腕も脚も、肩も、指先も
なにもかもから
勇気を出して力を抜く
私の体は浮き上がり
きっと言った
助かった
言ったんだろう
今はもうなにも。
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