第22話 VSグリフォン①
俺とルーシアは朝食後、街を少しぶらついていた。ルーシアが「回復薬のストックが欲しい」と言ったからだ。無論、俺にはそんなもの必要無い。だって、全ての攻撃が即死に繋がるからね……。
このプレイヤータウン<シンジュク>にはアイテムが売られている大きな市場もあるのだが、路傍でNPCや冒険者が気まぐれで販売しているような小さな露店も所々に見られる。
回復薬の購入後、俺達は何か目ぼしいものを探して露店を練り歩いていた。そこで、移動販売をしているのだという行商人から軽食も買っておいた。これは昼食用である。グリフォンへの主立った攻撃手段が俺である以上、長期戦が予想されたからだ。
雑魚モンスターであれラスボス級のモンスターであれ、アヌビスゲートは相手に攻撃すれば必ず「1」以上、ダメージを与えられる仕組みになっている。中にはダメージを無効化するような敵も居るのだが……今回倒すグリフォンやドラゴンは、どんなに攻撃力が小さくても確実にダメージ自体は与えられるようになっている。
だが相手はボスモンスターであり、HPも相応に膨大である為、どれだけ戦闘が長引くか分からなかった。相手のHPが有限である以上、僅かなダメージでも与え続ければいつかは倒せる。つまり、ゴリ押し作戦なのだ。
早く終わるかどうかはルーシアの火力次第だな。
ちなみにモンスターの中には、ダメージを一定量与えると、HPを回復してしまうような面倒な奴も居るのだが……件のグリフォンに自己回復能力は無い。
「毎度あり! 出来立てだからウマイよ!」
「見て、シグレさん! 美味しそう!」
まぁそんな訳で、間食する暇があるかどうかは疑わしいのだが、見た目がウマそうだったのと……あとはルーシアのモチベーションを保つ為に昼食を買った。こんがり焼けたバゲットに肉と野菜が挟んである。サンドイッチみたいなものだ。ルーシアは喜色満面でアイテムボックスへと仕舞い込んでいた。騙すようで気が引けるが……
その後、俺とルーシアは森へと向かった。フィールドに入って暫くは馴染みの光景が続く。途中に出現してきたスライムやクマなんかは、ルーシアによって瞬殺されていく。
……いやー、何と言うか頼もしいね。それに、華がありますね。戦う度に血だるまになる俺と違って、モンスターを華麗に葬り去る美女。そのお姿。とても美麗ですね。
というかね、ルーシアが銃剣を振るう度に揺れるんですよ。ええ、アレです。豊かな乳房的なアレが。パイオツ的なものがバルンバルン揺れる訳ですよ。えっ、あ? スライムが倒されて……あれ、肌色のスライムが二体出現しただと!? ……ああ、ルーシアの胸か。みたいな。
「俺も手伝おうか?」
「うーん。いや、アタシがやった方が早いし」
装備したガンソードを薙ぎ払い、ルーシアはスライムの息の根を止めた。俺が戦っても良かったのだが却下された。
仰る通りだ。俺が戦ったら異能のせいで時間が掛かるからな……。だからこそ目下、ルーシアの豊かな双丘を観察していたのだが。
雑魚モンスター共を鎧袖一触に捻じ伏せながら、森を抜ける。ここからは湿地帯となる。野犬やゴリラが出てくるのだが、何よりグリフォンが出る。気を引き締めて進まねばならない。
湿地帯に突入して、すぐに前方から野犬が走ってくるのが見えた。ルーシアは即座に照準を合わせると、一発。銃声が響き、野犬が透明になって消えていく。見事始末してみせた。
――その後も、鮮やかなお手並みだった。野犬の群れが襲い掛かってきたが、遠距離から射撃して数体を撃破し、近づいてきた一体には一太刀を浴びせる。
うーむ、ルーシアは中々良い動きをするね。勿論彼女のレベルが高くて、野犬が弱いというのもあるが。それでも久々に良いプレイヤーを見かけた気がする。
俺はプレイヤーバトルで数多のプレイヤーを葬り、泣かせてきた。上級者向けの難易度をプレイしているような奴等ではあったんだが、そいつらより全然良い動きをしているから驚きだ。レベルがもっと上がれば結構強くなるんじゃないか? まぁ、現役の俺には敵わなかっただろうけどね。
「シグレさん、この辺だったっけ?」
「ん、そうだな……」
装備していたガンソードを引っ込めて、ショットガンへと切り替えながらルーシアは尋ねた。彼女の視線は前方、約五十メートル先のモンスターを捉えている。
そう、確かグリフォンが出てきたのはこの辺だった筈。ゴリラと野犬の群れ、それからバトルウルフ、最後にグリフォンが姿を現したな。前方にゴリラと野犬の群れが見える。という事は、俺達が今来た道からはバトルウルフが襲ってくるのだろう。そして、その両方の中間地点、丁度今居るこの辺りで、グリフォンとエンカウントする事になる。
「乱戦になったら勝ち目は無いわね。まずはあのゴリラ達を始末するわよ」
「いや、待て。それじゃ駄目なんだ」
俺はルーシアの意見を却下し、後方を振り返った。……バトルウルフは未だ来ていない。
「どういう事?」
周囲を警戒しながらルーシアが問うた。
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