第140話 ホウキュウジャーVS斑鳩の軍隊

冷蔵庫から飛び出した2人は命からがら斑鳩から戻って来たが、リアが涙を流しながら部屋に閉じこもってしまった。

涼達は戻って来たパーシーに事情を聞く為ブリッジへ集まっていた。


「はあ!?アリシアがジュリアンを助けた!?」

「しかも、アリシア姫はリアさんに汚らしい亜人って言い放ったのよ!!何よアレ!」

「アリシアがそんな事言う訳ないだろ!!」

「現に言ったわよ。聞いたんだから!」


パーシーははっきりと言い張る。

もし本当だとしても絶対に本心な訳ない。ずっと一緒に旅して戦って来たんだから間違いない。


「それは絶対に間違いでありますよ!姫様はそんな差別をする人じゃないでありますよ。暑化粧女じゃあるまいし!」

「同感だ!」

「姫がそんな奴なら俺達がガネットを守ると思うか!」

「絶対に弱みを握られてるからに違いありませんぞ!」


仲間達も同意見だった。


「確かにアリシア姫…泣いていたわ…そりゃそうよ。あんな裸の女の子に囲まれていやらしい事してたアイツの奴隷にされてたんだから…」

「マジでありますか!?」

「信道さんも城にいたらしいわよ。」


のぶが居たって事はほぼ間違いなく家族を人質に取られてる事は間違いないな。


「三馬鹿は?」

「いなかったわ。」

「他にわかった事は?」

「ないわ」

「それだけかよ!!」

「仕方ないでしょ私も純情を貶されそうになったんだから!」


パーシーは真っ赤になり怒鳴り上げた。

つかよ、バスローブ姿で戻ってきてもなんの説得力もないからな。


「ベル。リアを見てきてくれ!」

「はいであります!」


ベルはそう言うと部屋を出て行きリアの個室まで向かう。



リアの個室まで来たベルはドアをノックする。


「コンコン。リア?入るでありますよ!」


ベルはドアを開けて中に入るとベッドでうつ伏せになり泣きじゃくっているリアが居た。


「リア…大丈夫でありますか?」

「ベル…ちゃん…」


ベルは近寄りベッドに座る。


「聞いたでありますよ。姫様は心にもない事を言っただけでありますよ。本心じゃないでありますから!」

「姫様…泣いてました…凄く…怖がってる!!」

「私も姫様を助けたいでありますよ…」

「私達の大好きな姫様があんな…あんなこの世の終わりみたいな顔して泣いて…あんな…奴隷同然の扱いで…いやらしい事をされて…ううう…」


リアはアリシアに酷いことを言われたから泣いているのではなく、あの地獄からアリシアを助けだせなかった事が悔しくて仕方なく泣いているのだ?


「姫様もきっと泣いてるでありますよ。きっと一緒に来れなかった理由があるんでありますよ!」

「何が勇者ですか!大切なお友達1人助けられないのにっ!!何が…勇者ですか…う…うわぁぁぁぁぁんっ!!」


リアはベルの胸を力一杯抱きしめ大泣きする。


「よしよし。大丈夫でありますよ!絶対に姫様は私達の助けを望んでるでありますから!泣かないでリア!」

「うわぁぁぁぁぁんっ!!」


ベルは悲しさで押しつぶされそうになっていたリアをただ黙って聞き頭をそっと撫でてあげた。

今の自分にできる事は今はこれだけだが必ず助け出す事を誓って。


ウーウーウー!と警報が鳴り響く。


「え?」

「け、警報であります!!」

「ベル!応答して!」


コハクがリアの部屋にいるベルを呼び出す。


「どうしたでありますか?」

「ベル。リアを連れて大至急ブリッジへきてくれ!緊急事態だ!!」


コハクはそう言うと通信を切る。


リアは涙を拭くと立ち上がり部屋を飛び出して行き。ベルも跡を追っていく。

ブリッジへ着いた2人は机の上に息を切らしているポップを見つけた。


「ポップくん!?」

「涼さん。何があったでありますか!?」

「それがよ…」

「何があったんですか!?」

「大変だ…斑鳩が…」


ポップは水を飲み干す。


「ぷはぁ〜斑鳩が向かってくる!ゴライ木に!!」

「「「「「「「!?」」」」」」」」


七人は驚きを隠せない。


「それどう言う事よ。ポップ!!」

「詳しくは女王様が話すから早く来て!」


涼達は急いで食堂へ向かうと冷蔵庫のダイヤルを弄りゴライ木のレジスタンス本部へ合わせると扉を開け全員急いで入りレジスタンス本部へ向かう。



武器庫のドアから飛び出した涼達は急いで女王のいる作戦本部へ向かう。

作戦本部では大勢のレジスタンス達が慌てためていたる。


「落ち着きなさい!」

「女王様!」

「皆さん!待っていましたよ!」

「一体何があったんだよ?斑鳩が攻めて来るって!?」

「はい、どうやらこの場所がバレたようなんです!」

「何だって!?」


涼は声を上げた。

斑鳩にレジスタンスの本部がバレた!?一体何でだよ。


「どうやら…裏切り者がいたそうなんです!」

「裏切り者ですって!?」

「ここへ!」


女王がそう言うと奥から縄で縛られた1人の兵士が突き出されて来た。


「アンタ、アンジェラの兵士じゃない!!」

「ちょっと待って下さい!」


リアがしゃがみこみ縛られている兵士の懐から何かを出した。


「な!?オイそれって!!」

「ジルド教のロザリオであります!!」

「ジルド教?」

「バルマス皇帝の国が支持していた邪教ですね!」

「ジルド教は邪教ではない!悪魔に潰されたのだ!」


おいおいちょっと待てよ。

ジルド教って確か俺達が潰したカルト宗教集団じゃないか。


「まさか斑の兵士や寝返った連中はもしかして!!」

「寝返った?」

「はい。各国の兵士達のうち寝返った者が多数おり、ガネットは大半が寝返った者達によって落とされたと。」


女王が言うにはガネットが落とされた日、斑鳩の兵士だけではなく国を守るはずのガネットの兵士達が裏切り斑鳩に加担したらしい。


「その寝返った連中はもしかしてジルド教の残党か?」

「ジルド教はあくまでバルマスの国教であり他の国では馴染みはないはずです。」


なら何で裏切っているんだよ。


「ジルド教再建の為の天命を女王陛下が前もって与えて降ったのさ。私はジルド教再建の為のスパイとしての名誉を仰せつかった者!貴様ら悪魔はもう終わりだ!」


「五月蝿いわ!」


カイエンは死神の鎌を取り出し裏切り者の魂を軽くかり気を失わせた。


「何の事を言ってるのかしら?」

「もしかして泥棒女がガネットに堂々といた時に何か仕込んだのか?」

「いずれ姫様達を亡き者にする為の布石として用意した物を」

「斑鳩の世界征服に使った可能性が高いか…」


魔人族の妙な呪いか何かで暗示をかけたのかもしれないな。

あの泥棒女が居なくなってからは何も無かった筈だ。

予め仕込んでいたなら後は自分の掛けた呪いに合わせてサインを送ればあっという間に寝返える訳か。


「確かに魔人族にはそう言う呪いがあるでありますよ!」

「やっぱりか…」

「でもあの暑化粧が使えるような簡単な術じゃないであります。」


確かに術は大した事ないからな。

ていう事は別のやつの仕業か。


「それよりも。斑鳩が此処へ向かっていると言うのは?」

「本当です。今偵察部隊を送っているところです」

「報告します!」


レジスタンスの兵士が慌てて飛び込んで来た。


「何事ですか!?」

「斑鳩の勢力を確認しました!!」

「戦力!?」

「信じられない数の黒い宝石の巨人と戦艦に空飛ぶ船に更に兵士達が役…70000です!!」


「な、70000ですっ!?」


女王が声を上げた。


「こっちの戦力は?」

「役、2000人です。しかも向こうと違って…戦艦などはありませんで…」


七万ってオイ…そんなの勝てる訳ない!?

絶対に負ける。数の上では絶対に無理だ。魔人族が裏で回ってるなら余計だ。いくら頑丈なゴライ木でもそんだけの軍隊と火力ではどうなるか判らない。


「無理よ…絶対に…勝てないわ…」

「七万なんて…絶対に無理だ…」

「皆はすぐに避難しなさい!」

「女王様!?」

「私が七万の兵を足止めします!」


アンジェラ女王はそう言うと杖を構えて外へ向かう。


「女王様待って下さい!今女王様が居なくなったら生き残った皆んなはどうするんですか!?」

「そうだぜ。俺達は女王様に助けられたんだ!!だったら俺達も!!」

「駄目です。若い貴方達がこの国を立つ直すのです!」

「止めてよ叔母さま!私女王なんて向いてないわよ!」

「パージバル。娘が囚われた今、貴女しかアンジェラの血を引く物はもう居ないんですよ!!」

「私はただの駆け落ちした男の娘ってだけよ!ママが王女だったとしても…私には無理よ!」


何かさらりとんでもない事を聞いちまった…この泥棒が王位継承権を持ってるってことか!?

しかも、アンジェラ女王の娘つまり王女は斑鳩に連れ去られたってマジかよ。


「娘も助けられなくて何が女王ですか。私は既に老いた身。朽ちるのが早いだけですわ!」

「叔母さま!!」

「早く逃げなさい!」


必死に止めるパーシーをなぎ払いアンジェラ女王は心を鬼にして言い放つ。


「いや、逃げるならアンタ達!」


アンジェラ女王に立ち塞がったのはなんとカイエン。


「な、何を言ってるのですか!?」

「女王様は今や要。我輩達が時間を稼ぎますから。その隙に逃げてくだされ!」

「蜥蜴…首なし」

「何を言ってるのですか!!七万ですよ!?いくら勇者である貴女方であっても生きて帰れる保証は無いんです!そこを退きなさい!!」


アンジェラ女王は2人をはらおうとするが。


「失礼!」

「ごめんなさい!」


リアとコハクはそう言って女王に剣を向けると紫色の煙が女王に顔にかかる。

するとアンジェラ女王は忽ち眠りについてしまった。

コハクはすかさず受け止めると女王を兵士に頼んだ。


「何したの!?」

「催眠宝石です!」

「眠ってるだけだ」

「お前達どうする気なんだよ!」

「ちょっと七万の敵をぶっ飛ばしてくる」


「簡単に言うんじゃないわよ!」


パーシーは声を上げた。

いくら宝石獣がいる勇者と言えども戦艦や怪物も含めた総勢7万の敵を相手にできる訳がない。


「足止めくらいならできるでありますよ!」

「どうしてアンタ達がする必要がある訳!?」

「何でお前らそこまで出来るんだよ。俺達の為に?勇者だからか??」

「いや違うな!」


カイエンがそう言うと皆も頷く。


「俺達は!」

「「「戦隊だ!」」」

「であります!」

「なんだろ?涼!」


ぽかーんとしている涼はようやく理解した。


「お前ら俺のセリフを全部持ってくなよ!!」

「お前が遅いからだよ!」

「でも、いいのか皆んな?」

「何がだい?」

「七万だぞ!!はっきり言って俺でさえ名乗りあげるか躊躇ったのにお前達が言うなんて!!本当にいいのか?」


はっきり言ってこんな負け戦の大博打をやる馬鹿はいない。

涼でさえ仲間達を死なせるかもしれないこんな博打に名乗りあげなんか出来なかったくらいだ。


「どうせどこ逃げても同じだろ?」

「いつかは戦うしかない。」

「我輩とて送ればとりませぬぞ!」

「黙ってはいられません!!」

「涼さん。今こそヒーローの出番でありますよ!」


「みんな…」


涼は周りを見渡す。そこには頼もしい仲間達がこんなに居た。色んな事があり正直怖くなりお地毛ついた自分とは違う。

皆んな本当にここの人達を逃す為に守る力がある自分達だからこそ今やるしかない。


「じゃあ。行くか!」

「「「「「オウ!」」」」」

「待ってくれ!俺も連れて行ってくれ!」

「私もサポートくらいなら出来るわ!!」

「2人共船は人手不足でありますよ!」


ベルはそう言うとパーシーとポップを引っ張り船へ向かう。

涼達は女王をレジスタンスに任せると船へ向かう。



ゴライ木のすぐ側まで来た斑鳩の戦艦と兵士達と魔宝獣達総勢7万。

涼達は船でその真上まで来た。

涼達の船を見つけると戦艦と魔宝獣達が総攻撃を開始した。

攻撃は全て結界(シールド)が防御する。

しかし、威力が高いビーム砲が雨霰と飛んでくる為エネルギーが馬鹿食いしておりこのままじゃ直ぐにエネルギーが底をつく危険がある。


「凄い。あの攻撃でビクともしないなんて。」

「当然でありますよ。私が作ったんでありますか!」

「でも、エネルギー馬鹿食いしてるじゃないか。このままじゃまずくない!?」

「言われ無くても分かってるでありますよ!!」


ベルはエネルギー調整しながらコンソールをひたすら弄り回す。


「ベル。聞こえるか?」

「はいであります。涼さん!」

「格納庫を開けてくれ!」

「ええ!?着陸しないわけ!?」

「意味わかるな?」


「解らないわよ!!」

「知らないぞ!」


パーシーとポップは声を上げた。


「もちのろんでありますよ!ぽちっとな!」


ベルがボタンを押すと格納庫の扉が開く。


「行くぜ!ルビティラ!」

「よっしゃー!久々に暴れてやるティラ!!」


ルビティラはそう言うとコックピットに涼を乗せる飛び降りた。

ルビティラに続き、マリケラ、パッキー、ラルトル、オニステ、ワニ爺、ブラキオも飛び降りた。


「て、皆んな飛び降りたじゃない!?」

「大丈夫なのかよ!?」

「大丈夫でありますよ。皆さんなら。」


涼達は丁度敵の前線部隊の前に着地した。

斑鳩の軍隊達は一度攻撃を止めると行進も止めた。

空から降って来た宝石獣から涼達が出てくると宝救剣を構える。


「やっぱり出てきたか…」


敵の前線部隊が道を開ける。

ゆっくりと歩いてくる1人の男。


「のぶさん」


北村・ハヤガ・信道だった。


「よく判ったな」

「仲間だからな」

「俺はもう敵だ。」


信道は宝救丁とチェンジエッグを取り出す。


「のぶがこの部隊を指揮しているのかい?」

「いや別の奴がな。俺は補佐だ。」

「なあ、のぶさん。事情は聞いたよ。何で俺達を頼らなかったんだよ?」


涼は信道に問いかける。


「これは俺の問題だ。お前達には関係ない」

「関係ありますよ!私達仲間じゃないですか!!」

「そうですぞ、のぶ殿!」

「のぶ…本当に俺達とやり合う気か?」

「ああ」

「のぶ、君は!」


「話は終わりだ。」


信道は勇者石をチェンジエッグにはめ込み剣の持ち手で中央のボタンを押す。


へい!とりあえずゴールド一丁!


「乾杯(プロージット)!」


信道は剣の刃をエッグの裏の切り込みに当てスライドし掛け声をあげる。

剣からビールの様な金色の光が吹き出し信道の身体に浴びる様にかかるとスーツと鎧にブーツとグローブが装着され最後にパートナーを模したヘルメットが装着され変身完了した。


「やるしかないんだな!」

「早く変身しろ」


信道はゆっくりとそう言った。


涼達も宝救剣に勇者石をはめ込む。


レッド!ザ!宝救武装!

ブラック!ザ!宝救武装!

ブルー!ザ!宝救武装!

グリーン!ザ!宝救武装!

ピンク!ザ!宝救武装!


「「「「「宝救武装(ホウキュウチェンジ)!」」」」」


5人は掛け声に合わせ剣を高く上げると剣先から光が吹き出し涼達の身体に降り注ぐ。

光が纏い宝石の鎧とスーツを構成し次にブーツとグローブが装着され最後にパートナーを模したヘルメットを装着し変身完了した。


「ふん。かかれ!」


信道がそう言って宝救丁を涼達に振りかざし向けると七万の軍隊は一斉に涼達に向かって行く。


「みんな!行くぞ!!」

「「「「オウ!」」」」

「やってやるティラ!」


涼達と宝石獣達も七万の敵とホウキュウゴールドに向かっていく。

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