第95話 船を作れ材料探しの旅へ

「奴らはまもなくこの魔界に来るだろう」

「奴らが魔界に?」

魔界城の玉座に座る魔王ヴァニティとその家臣たる魔王達とアッシュベルにアイカ。

「陛下!奴らは父の仇ですわ!」

「アイカよもう演技はよい」

二本角の女魔王サディナがアイカにそう言う。

「貴様は単に利用価値があるから懐いていたかに見ていただけだろ?」

「失礼な事を言いますわね!サディナ様」

「じゃあ聞くがあの豚が良き男に見えたか?」

「パパは肥満でしたからね」

「それが答えだ」

全てを見透かしたような口ぶりのサディナ。

「けどよ陛下。奴らはとんでもない物を手に入れたみたいだな」

「レッドベリルか…よもや、あのような力がまだ人間族の側にあったとは予想外でしたな陛下」

「案ずるなガルム。アレにはちょっとした欠点があるからな」

「欠点?」

「暴走さ」

「暴走ですか?」

「強い力にはリスクがあると言う事ですか」

「ああ、今はまだそこまでのリスクは無いが。だが早める事は出来るさ!」

「早める?奴を怒らせるって事かい?」

「それもいいが面白くない」

「ではどうやってですか?」

「アッシュ!」

ヴァニティがアッシュベルを呼ぶ。

「はっ!言われた物はとうに!」

「良くやってくれた。」

ヴァニティは渡されたケースから何かを取り出した。

「陛下なんだよそれは?」

「口が過ぎるぞオスカル」

注意するコキュートス。

「こいつはな自然界に存在するこの世で一番危険な代物だ!」

「危険な代物?」

「そうです。人間族が下手に触れば身体が朽ちて死にます」

「その石は何なんです?」

「人間族いや生き物全ての危険物…です」

:

「空飛ぶ船を作るって!?」

「出来るのベルちゃん?」

「ふふふ!私は天才でありますよ!」

「答えになってないわ!」

「具体的にどうすんだよ?」

「これを見るでありますよ!」

ベルはそう言うと机に設計図を広げた。

ノアの箱船と言うべきくらい大きな船だ。翼が付いていて見方によれば館船みたいだ。

「凄いわベルちゃん!」

「お前いつのまにこんなもん」

「前から一様考えていたんでありますよ。ほらメンバーも増えたてこの基地も狭くなりかつ空からなら現場に急行出来るでありますから!」

確かにいつのまにか10人以上の仲間がこの基地に集う場所になった。しかし確かに窮屈に感じるな。

「ただ実はまだ部品や各部分に使うパワーを秘めた石が足りないんでありますよ」

「各部分に使う石ですか。やっぱり動力や周りにコーティングする材料とかにですか?」

「その通りであります愛(まこと)!」

「その石って言うのは何なんじゃ?」

「必要な鉱石は、金紅石、重晶石、黒曜石、タングステンであります!」

「金紅石ってルチルね!」

マナリアがそう言った。

「重晶石とは砂漠の薔薇じゃな!」

「タングステンって特撮じゃお馴染みの硬いやつか!」

「イヤ分からんからな!」

「要は宇宙にも耐える金属です!」

愛がそう言った。

これらの石は特定の場所でしか取れない物で現実の世界でさえ取るのは苦労する代物だ。

「この四つが必要なんでありますよ。」

タングステンは表面に、ルチルは翼に黒曜石はシールドを貼る為に砂漠の薔薇は動力に使うのだ。

「どれも此処からかなり離れた場所にある上に中々見つからない代物よ」

「うわ〜難題ですな〜」

「でも探さないと魔界へは行けないんだろ」

「はいであります!」

「だったら探しに行かないとな!」

「で、ベルちゃん。その石は何処にあるんですか?」

リアが聞いた。

「それぞれ、アリソナ砂漠、パラケウス大陸のアマゾンに顔面島があった辺りの島であります。」

「黒曜石はタングステンがある洞窟に隠してあるからな!」

「本当かブラキオ!」

「ああ、行けば直ぐに手に入るはずだ!」

「他が問題よ」

そうアリソナ砂漠はガネットからずっと南で着くには馬車で10日はかかる場所にありパラケウス大陸は海渡った先の大陸、更に顔面島の周りの島も何個あるか判らない。

「ブラキオどんな島だ?」

「火山がある」

「島にはいくらでもあるわ!」

「集めるだけでも難しいか」

「船はどれくらいかかるんですぞ?」

「ざっと一ヶ月くらいでありますね」

まじかよ一ヶ月もかかるのか。まあデカイ船だし色々と必要だし仕方ないか。

「よしここは分かれて探そうぜ!」

「3チームに分かれる訳か!」

「確かにその方が効率的ですね!」

「場所はそれぞれ陸海空って感じだな」

和樹がそう例えた。

砂漠は陸から大陸は空からそして海から行くと考えてだ。

「それに合わせて宝石獣達も必要だな。何が起きるか判らないからな」

「じゃあ、陸はホウキュウオー、海はゲーターオー、空はエンカイオー残りはガネットの守りだな。」

つまり、ブラキオかカルタノハオーだ。

「わかったわ。私今回ガネットに残るわ!」

「アリシアが!?」

「姫様は絶対に付いてくるかと思ってた!」

「どう言う心境の変化だ?」

「私は時期女王として此処に残って街を守りたいの。それに皆んなの足手纏いにならない為にお祖母様に特訓をお願いしたの!」

「そうか、わかった!」

「じゃあメンバーだが。」

ルビティラは涼だから陸は任せるとして。

「大陸はゴルーケンで行くから俺が行く」

「師匠!自分もお供します!!」

「そうか、よしリアお前も来い!」

「え!?私もですか!?」

「いいじゃないですか!自分達料理人チームで行きましょう!!」

1人で盛り上がらないで下さいよ海斗さん。

「まあいいじゃないか偶には!」

「はぁ、判りました」

大陸へは信道、リア、海斗が行く事になった。

「海組はワニ爺だから」

「我輩とカイエン殿の名コンビですな!」

「それと和樹お前も行ってくれ!」

「俺もか!?」

「ゲーターオーだけじゃ出来ない事もあるからカルタノの力が要るだろ!」

「わかった。そう言う事なら俺も行く」

「我輩達に任せて下さい!」

「自分で言うかよ」

「同感だ」

「酷いですぞ2人とも!」

海はカイエン、ルーガル、和樹の3人が向かう事になった。という事は陸組は。

「陸は俺、コハク、愛(まこと)だな!」

「先生、宜しくお願いします!」

「まあ君達だけじゃ心配だからな」

「決まりじゃな!ワシらは嬢ちゃんの手伝いじゃ!」

「そうですね先生。ベルちゃん何でも言ってね!」

「心強いでありますよ!蝦蟇爺、賢者様!」

「よし、そうと決まれば今日はパァーとやるか!俺のおごりだ!」

「お!のぶさん太っ腹!」

「茶化すな!海斗手伝え!」

「判りました師匠!」

「私も手伝います!」

信道達は馬車を後にし建て直された自分の店へ向かった。

:

その夜、信道の店 居酒屋金の皿。

「乾杯!」

「「「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」」」

仲間達はジョッキを宙に掲げ乾杯した。

「かぁ〜美味い酒じゃな!」

「蝦蟇爺はビール始めてか?」

「まあな。こんな美味いとはな!」

「信道の店は料理も最高なんですよ!」

「蝦蟇爺さん。柳葉魚食ってみてくれ」

信道は子持ち柳葉魚(ししゃも)を出した。

「おー!魚か!どれどれ…んぐ。」

蝦蟇爺は器用に箸を使って食べている。

「んん!実に美味い!」

「だろ!」

「さあ、どんどん食べて下さい!海斗、生追加だ!」

「はい!」

海斗は以前と違い器用に持って行っている。

「海斗さん随分慣れてきましたね!」

「以前のあいつから見たら凄い変わりようだ」

2人は長い付き合いだから海斗が変わって来たのを間近で感じている。

海斗は毎日遅くまで手伝いながら料理の修行をしている。信道も教えてくれている店の主人も厳しいが確実に力になってると感じているのだ。

「んぐんぐ!のぶ殿串カツまだですか?」

「慌てるなよルーガル。もうすぐ出来るからよ!」

「信道さんジュースお願いします!」

「出してあるよ!リア閂(かんぬき)とグラスを一緒に運んでくれ!」

「はい!」

「行きましょうリアさん!」

「はい、アンズさん!」

リアは信道のいとこであるアンズと料理を運んで行った。

「んぐんぐ!」

「落ち着いて食えよルーガル!」

「カイエン殿もたまには頭着けて食べてくだされ!」

「俺はデュラハンだっての!」

カウンターに頭を乗せているカイエンがそう言うと首のてっぺんからビールを流しこむ。

「かぁ〜美味いなのぶ!」

「そう言って貰えて嬉しいよ。ルーガル串カツ上がったよ!」

「おー!待ってました!」

ルーガルは串カツにかぶりつく。

「あっつー!」

「揚げたてだから気をつけな!」

ルーガルはビールを飲み干す。

「ぷはぁ〜」

「だから言ったろ」

「面目無い」

ルーガルとカイエンは共に笑いながら食事を楽しんでいる。

「全く愉快な連中だな〜」

「君が集めた仲間達だろ!」

「まさか夢の戦隊を異世界でやるとは思わなかったな〜」

今思うとあの日、俺がこの勇者石(チェンジストーン)を拾ってから全てが始まったんだよな。もし拾わなかったらどんな未来だったんだろうか〜俳優のオーディションを受ける日々には違いないだろうが。

「何だっていいじゃない。涼、このチームは貴方が英雄(ヒーロー)になったから生まれたし魔人族と戦えるのも皆んな貴方が中心になって戦ってきたからよ!」

「俺だけじゃ出来なかったよ。仲間達が集まって力を貸してくれたから今の戦隊があるんだ!」

どんなチームも独りよがりでは上手く行く訳はなく必ずバラけてしまう。そういや俺の世界のホウキュウジャーのラスボス。ヴァニティもこの世界のヴァニティとかなり似てた。いや似すぎてる。立ち振る舞いや言葉使いだけじゃなく殆ど瓜二つの格好だ。まるでコスプレみたいに。ただの偶然か。

「君は馬鹿だからな。心配だから付いてきただけだよ。僕達は!」

「コハク。またそんな事言って!」

「まあ此奴が馬鹿なのは違いないがな!」

「なんだよ。皆んなして馬鹿馬鹿ってよ!」

「涼はお馬鹿よ!ね、みんな!」

アリシアは笑いながら尋ねる。

「馬鹿だな」とカイエン。

「馬鹿だ」とコハク。

「馬鹿ですね」とリア。

「賢くはないですな」とルーガル。

「お前が言うな。二人共どんぐりの背比べだ」と信道。

「でありますな!」

ベルはそう言うと串カツを頬張る。

「「「確かに」」」

と和樹達。

「オイ!皆んな!」

涼が突っ込むと店の中が笑いで溢れた。

「全く愉快な連中じゃな」

「先生が勇者だった時もですか?」

「確かにな」

初代勇者が居た頃もこんな風に仲間達と笑いあったもんだ。

もう生きてるのはワシだけじゃが、他の皆んなは結婚した話を聞いたからのあやつらの子孫達は元気かの〜

蝦蟇爺は昔にひたっている。

その夜は本当に楽しいどんちゃん騒ぎだった。仲間達は皆笑いながら食事を楽しみまた来る戦いを一時忘れめい一杯楽しんだ。

:

次の朝、準備終えた仲間達は旅立つ為に基地のリビングへ集まる。

「じゃあ留守をお願いしますね!」

「大丈夫だよ。安心して行って来てね!」

「道中気をつけてな!」

「ああ!」

「それじゃあお先に行って来ます!」

「では一ヶ月後にまた会いましょう!」

信道達はそう言うと冷蔵庫を通り抜けて行きその後を小さくなった宝石獣達も追って行った。

「では我輩達も!ラルトル急ぐのだ!」

「ギャーー !」

ギャーギャー五月蝿えよ蜥蜴野郎!それはお主だろうが!

「ワニ…」

なんか心配になって来たの…

「テゴ」

確かに…

「心配性だなお前達は!」

「まあ、ルーガルのあのテンションはな」

カイエンはリュックにワニ爺とオニステをしまうと冷蔵庫の扉を開けた。

「ギャーギャー!」

じゃあな!

ラルトルはさっさと飛び込んだ。

「こらまたぬか!」

「オイ待てよ!」

「じゃあまたな!」

カイエン達も冷蔵庫に飛び込み目的地へ向かって行った。

「全く慌ただしいな彼らは」

「後は僕達ですね!」

「じゃあ留守を頼んだぜアリシア!」

「涼!」

「ん?」

「せいぜい頑張りなさいよ!」

アリシアはそう言いながらも笑顔で見送る。

「おう!必ず見つけて帰って来るからな。一ヶ月後にまた会おう!」

そう言うと涼は冷蔵庫に入った。

ゴチン

はずだった…

「こらルビティラ!邪魔だから出るんだ!」

「何で冷蔵庫に挟まってるんですか!」

「俺も行くティラ!」

強引に冷蔵庫に入ろうとするルビティラ。

ていうか入り口狭いのにどうやって基地ん中に入った!?

「ルビティラお前これ以上小さくなれないのにどうやって紛れてきたんだ!?」

「行くティラ〜」

「ああもう、ラチがあかない!」

コハクはそう言うとルビティラの尻尾を掴み前へ押した。

「仕方ないですね…」

「たく!」

三人はルビティラを強引に冷蔵庫に押し込んだ。

「いでででティラ!!」

「自業自得だ我慢しろ!」

「そうだ!」

「腹引っこめろ!せーの!」

「入った!」

「て、あれ?」

ルビティラは冷蔵庫に吸い込まれ涼達もそのま吸い込まれた!

バタンと冷蔵庫が閉まる。

「皆んな行っちゃった」

「よかったのか?一緒に行かなくて?」

「いいの。私にはやるべき事があるもの!」

「そうか。しかし前途多難だな」

ブラキオが振り向くと基地の入り口が無残な事になっていた。

「え!入り口が!?」

「ルビティラが無理やり入ったんでありますな!」

「仕事増やしおって…」

「本当に見つかるかしら」

やれやれと思いながら彼らの帰りを信じて待つしかなかった。

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