幕間 バッドエンドが好きな女の子

 私はバッドエンドが大好きだ。

 だってバッドエンドを見ると心が大きく揺さぶられるから。もちろん胸糞悪いのを見たら人並みにイラっとするし、気分も悪くなる。しかし、その感覚が好きなのだ。


 世の中には現実が暗いから、物語くらい明るいものがいいという人がいる。違う。そうじゃない。世の中が明るすぎるから物語には暗いものを求めるのだ。望めばなんでも手に入り、誰も私を𠮟らない。だから物語くらいは凄惨な目に合いたい。


 そういえば先日、友人が死んだ。名前はファニー。そこそこ仲が良かったので、死んでそこそこ悲しい。だから良かった。

 悲しいという感覚はとても気持ちの良いものだった。心を襲う虚無感。それは心地良いものだ。悲しいというのは素晴らしい感情だと思う。


 私はバッドエンドが好きだ。何故ならバッドエンド好きな人は文句を言わないから。ハッピーエンドが好きな人は少し気に入らないことがあるとすぐに喚く。でもバッドエンドが好きな人は気に入らないことが好きなので、もっとやれと叫ぶ。

 だから私も気を遣わずに済む。私は人の心が分からない。だから無意識に人を傷つける。そして人は私を『悪者』だと言う。それは不愉快。


 でもバッドエンドが好きな人は私を『善人』だという。それは心地よい。バッドエンドこそが私の活きる場所。バッドエンドは最高だ。見るのも好きだし、描くのも好きだ。世界中の全員がバッドエンド愛好家になればもっと私の心地良い世界になるのにな。


 人は幸せを求める。だから幸せから遠ざかる行為は嫌う。なので人を不愉快にさせる私は嫌われる。みんながバッドエンド大好きなら私は人気者になれたのに。


 私のパパは権力者。だから私はなにをしても許される。そして私は人の気持ちが分からない。だから関わるだけで人を不幸にする。私の何気ない一言が周りを傷つける。そう気づいたのは八歳ごろ。


 十歳になろうかという時には私と言う存在が煙たがられて、常に陰口を言われていることを理解した。それと同時に本である言葉をみた。『短所は見方を変えれば長所だ』

 

 だから私は人を不幸にするという短所を活かした。誰かを虐めることにした。誰かを不幸に陥れると誰かは楽しんでくれる。それを理解した。私は自分の長所を活かすために虐めをすることにした。


 そんな私の名前はリリアン。バッドエンドが大好きな悪魔だ。

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