第13話 問題点
あれから三日が経った。今回の復讐に関しては各自で反省を行った。今回の主な反省点は『やりすぎ』だ。やりすぎた故にファニーの心が壊れて、消化不良で終わってしまった。つまり適度に壊れないように加減をする必要がある。
「加減ねぇ……」
私は近くの喫茶店で地元の新聞を読みながら珈琲を味わう。新聞はファニーの行方不明事件で持ち切りだ。これで行方不明者は三人目。ガブリエルにファニー、その彼氏。どれも私が関わったこと。もっともどうでもいいが。
それよりも今の課題は加減だ。ガブリエルもホームズ先生から問題点を指摘されて、それについて考えている。そして私も同じだ。初めて復讐をして、色々と思うところがあるのだ。
「騎士団の第三部隊からオソファーという男が調査にやってくるか……」
騎士団。全部で五つの部隊で構成されてる団体で事件や事故、災害の対処を主にしている団体。第一部隊はギャング担当、第二部隊は治安維持、第三部隊は事件担当で第四部隊がインターネット事件、第五部隊がその他を担当していると聞いている。もっとも騎士団の体制が変わったのは最近の話で色々と穴は多いとホームズ先生は話していたが。
そして今回やってくる第三部隊。それはリコを筆頭に総勢二十三名で構成されているそうだ。正直に言って犯罪が増加してる中で二十三名では人手が足りない気がするが、なぜか上手く回っている。本来は回るはずのないシステムを何故か回すことが出来る。それがリコの凄さだとガブリエルは言ってたが、果たしてどこまで本当なのか……
そんな時だった。私の目の前に一人の女がいきなり座ってきた。
「こんにちは。私はアリシア。騎士団の人よ。少し今回の行方不明事件で任意同行してもらっていいかしら?」
「……え?」
まずい。どこでバレた!? 死体は間違いなくルナさんが確実に処理をしたし、誘拐したのもルナさん。そして彼女はその道のプロでそんなヘマをするはずは……
「顔を真っ青にしてどうしたの?」
「いいえ……とくには……」
「――もしかして今回の誘拐事件に関わってるのかな?」
「そんなわけないじゃないですか!」
私は声を張り上げる。しかし、その瞬間に喫茶店の視線が私に集まる。そして急に叫んだことで悪目立ちしたことに気付き、少しだけ恥ずかしくなる。
「喫茶店ではお静かに。さて、任意だけど同行してくれるかな?」
「拒否します」
「そう。分かったわ。それじゃあね」
そうしてアリシアは手を振って、その場を離れる。とりあえずホームズ先生に報告だ。今、同行してなにか聞き出されるのは非常にマズい……
しかしあっさり引き下がった。一体どうして……
「それと言い忘れたけど、同行を拒否したってことはそれなりに隠したいことがあるってことだよね?」
「あ……」
「今ので疑いは確信へと変わった。あなたは間違いなく今回の事件に関与している。騎士団の前で隠し事が出来るなんて思わないことね」
そうしてアリシアと名乗った女性は喫茶店を後にした。完全にやられた。私は間違いなく犯人候補の一人になった。絶対にバレないはずだったのに、私のミスでみんなに迷惑がかかる。それは非常にマズい……
そもそも、どうして私が疑われた? 考えろ。今回の被害者はガブリエルとファニーと、その彼氏という扱いになってるはず。そして私とガブリエルの関係は、どう調べても出てこない。そして容疑者候補として絞るのは、まず三人に恨みを持つ人物のはず。私はファニーにしか恨みはもっていないのに……
* * *
電話が鳴る。電話の相手はアリシアだ。私は電話を取り、彼女から連絡を受ける。しかし、上司という仕事はやってみると大変だ。特に二十名近くもいる部下を覚えるのが大変だった。基本的に他人に無関心の私には辛いことだ。
「リコさん! 言われた通りにララに接触しました。あれは間違いなく関わってますね。しかし、なんで彼女が関わってるって分かったんですか?」
「不登校のララ。彼女が一日だけ学校に来た。それから立て続けてに事件は起きた。疑うなって方が無理な話よ。ただ、なんでこのタイミングで反抗を起こしたのかが気になるわね」
あるのは状況証拠だけ。それに行方不明なんて言うが実際は死んでるだろう。だから死体を見つけて調査を本格的にしたい。そして問題はどこに隠したか。
「ていうかリコさんは殆ど事件の真相が見えてるんじゃありません?」
「私はエスパーじゃないから……」
「またまた~」
「でも、この事件にララを裏から手引きした人物がいるのは間違いなさそうね。そしてララの家の見取り図を見る限りだと、死体の隠し場所は地下室かしら?」
ここでガサ入れして捕まえるのは簡単だ。さすがに家から死体が出たら言い逃れは不可能。だけど、それだと裏で手引きした人物はララを見捨てて逃げるだろう。だから出来ればやりたくないが……
「ていうか家の見取り図なんて、どうやって手に入れたんですか?」
「第四部隊にいる知人に頼んで、不正アクセスしてもらったのよ……」
「あーいつものですか。ていうか、ついでに防犯カメラの動画とか私のパソコンに送ってくれません?」
「足が付くから嫌よ。ただ一通り見たら、最初の被害者であるガブリエルが何故か生きてるのよ。どうしてかしら?」
「なにサラッと重要なこと言ってるんですか!」
そんなの言う機会を逃したからだ。とりあえずガブリエルは生きている。恐らく事件に彼も絡んでいる。彼は被害者ではなく、加害者側。
それを踏まえてどうするか……
「それとアリシア。あとで私もそっちに行くわ」
「私一人で出来ますからリコさんはもう少し休んでください! あなたはいつもそうやって無理をするんですから! ていうか現在担当してる事件数は幾つですか?」
「この事件を含めて。二十四ね」
「多い!」
「……分かったわよ。この事件はオソファーとアリシアに任せるわ」
まぁここまで言われたら仕方ない。今回はのんびりさせてもらおう。しかしこの事件はどうも気掛かりだ。不自然にカットされた防犯カメラ映像。それに状況証拠しかない失踪。まるで犯罪のプロが関わってるような……
「はい! 任せてください!」
「でも命の危険を感じたらすぐに逃げなさい!」
「分かっています!」
「それじゃあね」
そうしてアリシアとの連絡を切る。それから私はコートを羽織り、キャリーケースに最低限の荷物をまとめて準備をする。たしか今回の事件が起きた街は映画の街として有名だ。たまには映画鑑賞をしてくるのも良いかもしれない。私はスマホを出して、クロエに連絡する。
「リコ先輩。なんですか?」
「一週間くらい有給休暇をもらうわ。困ったことがあったらメールして」
「あーいつものですね。スックラ団長には上手く言っておきますので、お楽しみください」
さて、これで私は休暇中の身だ。それなら行っても文句が言われる筋合いはないだろう。それでは映画鑑賞に行こう!
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