第4話 リボルト#18 ようこそ新世界へ Part2 突然の手合わせ
「ほう、これが姫様が召喚した
遠くから、一人の大男がそのとてつもない存在感を示している。その両手には、獅子の頭をかたどったガントレットを装備されている。
俺の闘争本能が、こいつはかなり強そうな男だと教えている。それにあの固そうなガントレットに殴られたら、ひとたまりもないだろう。
それにしても、この人は一体何者だ? さっきの話からすると、彼はジェイミー姫とは知り合いのようだが……
「とぉりゃああああー!!!」
俺がそう考えているうちに、大男が急に飛びかかって、ガントレットを振り下ろしてくる。
あいつ、本気でやるのかよ! 早く回避しねえと!
俺は近くにいる千恵子の手を掴むと、反射神経の作用で後ろにジャンプし、大男の攻撃をかわす。すると彼の拳が地面にぶつかり、大きな音を立てた。
やがて地面が震え始めて、大男が攻撃した場所に大きな穴が開いてしまう。
その恐ろしい光景を見た俺は、思わず冷や汗をかく。側にいる千恵子も、落ち着きをなくした様子を見せている。
「ちょっとブレイブ! 何回地面を壊せば覚えるのよ! 修理代は高いんだからね!」
さすがにジェイミー姫も怒ったのか、彼女は目を見開いて大男に怒鳴りつけた。
「こ、これは失敬……強い相手を見るとつい興奮したようだ……」
ブレイブと呼ばれた大男は、申し訳なさそうにガントレットで後頭部を擦りながら頭を下げ続ける。やれやれ、どこの誰かに似てるんだか。
しかし、俺たちの実力を試したい連中は他にもいた。
次にやってきたのは、おびただしいカードの雨だ。距離がかなり近く、もはやかわす余裕がない。こうなったら……
「千里の一本槍・
俺は烈風を起こし、カードを他の方向へと飛ばすが、すぐさま次の攻撃が襲いかかる。
「おおおおおおー!!!」
やけに熱い掛け声と共に、炎の柱がこっちに向かって飛んでくる。おい、いくらなんでもガチすぎだろう!?
「危ない!」
熱い炎に気付いた千恵子は、すかさずP2を刀にチャージすると、水の弾を発射して炎を消した。
「くそ、次から次へと……一体なんなんだよ?」
あまりにも頻繁な攻撃に俺は苛立ち、周りの状況を確認する。
するとどうだろう。騎士のような派手な衣装を着ている人たちが、俺たちを囲んでいる。
「す、すごい人数であります! 12人もいるであります! それもかなりのエリートであります!」
相手の人数を確認した可奈子は、思わず大声を漏らす。俺の推理が間違えなければ、彼らはきっとこの国の精鋭部隊のような存在だろう。
「わお! よく見ると、イケメンが結構多いじゃない! せめてこの中の一人だけでもいいから、絶対アタシの旦那にしてやるわ!」
イケメンの多さに感嘆した美穂は、まるでバイキングで好きな料理を物色しているかのように、よだれを垂らしながらあたりを見回す。
「あーあ、また始まっちゃったよ」
そしていつものように、菜摘はそんな美穂をつっこむ。
「おお……どいつもすげー強そうだ! 是非手合わせがしたいぐらいだ! おーい、そこの! オレと勝負してくれ!」
一方、強い相手との出会いを求める正人は指を鳴らしながら、近くにいる小さな女の子のところに移動した。
おいおい、なんでよりによってあんな弱そうな……いや、「人は見掛けによらぬもの」っていうし、もしかしたらあんな弱そうなのに限って強いってこともありえるな。じゃないとこの王宮の中にいることもできないよな。
「ふぇ……? ごめんね~、今日はそういう気分じゃないのぉ~」
だがしかし、彼女には戦う意欲はないようだ。
「あっ、そうか……そいつは悪かったな! あははは!」
気まずい思いをした正人は、苦笑してごまかすしかなかった。しかしこれで終わると思いきや、事態が新たな方向へと発展する。
「では、代わりに私が相手になって差し上げましょう」
どこからともなく、放たれた冷たい一言。それと同時に、無数の氷柱が正人に向かって飛んでいく。
氷柱を放ったのは、氷のような白い髪の少女だ。見た目だけなら千紗に似ているが、その凛々しい目付きは千紗のそれとはまったく違う。いや、どっちかというと神崎の方に近いか。
「おっ、そうこなくちゃな! 龍炎弾!」
自信満々の笑みを浮かべた正人は、赤い炎を自分の拳に纏うと、それを大量の弾に分裂させて発射する。
炎の弾に当たった氷柱は、すぐに融けてしまい水蒸気になって消えた。
「なかなかやりますね……では、これならどうですか!」
白い髪の少女は悔しそうに正人を睨みつけると、すぐさま次の技を繰り出す。
俺はこの戦いの続きを見守ろうとするが、この混乱した戦況ではそうもいかないのは事実だ。
「よそ見をしている場合か?」
「……!?」
危険を察知した俺は、近寄る人影を見やる。顔にマスクを付けている一人の男が、横から太刀を振りかざして俺に奇襲を仕掛けてくる。
よく見ると、その太刀の先から眩しい雷光が迸っている。こいつも俺と同じ、雷属性の攻撃を使うのか!
相手の接近スピードがかなり速い。この間合いだと反撃を仕掛ける余裕はない……ならば!
「千里の一本槍・
俺はとっさの思い付きで稲妻を両足に纏い、素早いスピードで相手との距離を離す。
「なるほど、お前も雷電使いか……まさかそんな使い方を思い付くとは、なかなかやるな」
「そいつはどうも。それじゃ敬意として、俺の雷電を喰らえ! 千里の一本槍!」
俺は有無を言わせず、すかさず得意技を繰り出した。相手は敵じゃないので、もちろん手加減はしてあるが。
しかし千里の一本槍がマスク男に当たった直前に、彼の前に無数のカードが突然現れて、俺の攻撃を防いだ。
またカードか……まさかさっきカードの雨を作った奴と同じなのか?
「ほう、なんて凄まじい稲妻の槍だ。お前とはいい勝負になりそうだな、
シルクハットを被ったマジシャン風の男が、颯爽と俺とマスク男の間に割って入る。
なるほど、カードを操っていたのは彼だったのか。まあ、マジシャンの格好をしているわけだし、間違いないだろう。
「確かにそうだな。まあ、俺はただ彼の実力を試したいだけで、傷付けたいわけではないからな。その応対力だと、及第点と言ったところだな」
龍威と呼ばれたマスク男は、真剣な目付きで俺を見据えている。どうやら俺の実力が認められたようで、これで一安心だ。
それより、他のみんなの様子はどうなっているんだ?
「はあああああー!!!」
先ほどの白い髪の少女は、物凄い剣幕で大声を上げて、無数の氷柱を正人たちを目がけて発射する。
「おお、なかなか本格的だな! オレも負けてられないぜ!」
少女の本気を見て、興奮する正人。しかしよく見ると氷柱の数も大きさもバカにならないもので、このままでは正人が氷漬けにされちまう!
「くっ、あの馬鹿……! また無茶なことを……!」
後ろでそれを見兼ねていた拓磨は、機関銃を取り出して氷柱を撃ち落とそうとする。
「ワタクシもお手伝いします!」
百華も車椅子を操作し、バルカンで氷柱を撃ち落とす準備に入る。
しかしここで思わぬ邪魔が入ることを、誰も知る由もなかった。
「おい、何をしている! さては暗殺を企むつもりだな!」
「王国に仇なす
なんと大勢の衛兵が、急に血相を変えて二人を囲み始めたぞ! 一体何が起きているんだ?
「邪魔をするな! このままだと、お前たちも氷柱が当たってしまうぞ!」
「ゆ、揺らさないでくださいませ! 頭がクラクラしますわ……!」
衛兵たちのあまりにも激しい攻勢に、二人は為す術もなく戸惑ってしまう。しかし、氷柱が動きを止めることなく、見る見る正人たちに接近していく。
何なんだよ、この状況は! 仕方ねえ、ここは俺が止めるしか……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【雑談タイム】
友美佳「もう、何なのよいきなり! 百華を放しなさいって!」
秀和「ったく、いきなり実力を試されるとは、俺たちよほど期待されてるみてえだな」
哲也「いいんじゃないかい? 追い払われるよりずっとマシだろう」
千恵子「ですが、あの衛兵さん達の反応、明らかに尋常ではありませんね……一体どうされたのでしょうか?」
菜摘「ううっ、ケンカはやめようよ……」
正人「どいつもこいつも強そうだな! さあ、オレと勝負してくれ!」
直己「さすがは異世界、美女の質も高いな……おぐあっ!」
聡「まるでゲームの中の世界みたいだぜ……となりゃ、オレも魔法とか使えたり、金銀財宝を手に入れたり……くぅー、ワクワクするぜ!」
広多「いつまでそんな寝ぼけたことを言っている。これは間違いなく現実だぞ」
聡「おいおい、そんな夢のない話を言うなよー、現実主義者が!」
広多「ふんっ、何とでも言え」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます