6
「大丈夫だよ。そんなに心配するなって」
悲しそうな顔をしている美月に真琴くんはそう言った。二人は今、夕焼けに染まる下校途中の大きな川の横にある土手の上の道を歩いていた。
「うん。そうなんだけど……」
と美月は浮かない顔をして言った。すると、そんな美月の顔を見て真琴くんがくすっと笑った。
「お前、ちょっと変わっているよな」真琴くんが言った。
「変わっているって私が?」そんなことを言われたのは初めてだったので、少し驚いた顔をして美月は言った。
「俺のこと、あんまり怖がらないし、兎のこと、すごく心配したりするしさ」真琴くんは言う。
「それが変わっていることなの?」美月が言う。
「ああ。ちょっとだけな」真琴くんは笑顔で美月にそう言った。
そのあとで、「じゃあな、西谷。また明日」と言って、いつもの分かれ道で真琴くんは美月の前からいなくなった。
「うん。また明日」
そう言って、美月は手を大きく振って真琴くんにさよならをした。
それから美月はすぐ近くにある自分の家まで一人で歩いて帰って行った。その帰り道の途中で、あれ? と美月は思った。いつの間にか(くろが心配という気持ちはわかっていないのだけど)あんなに心配だった美月の心がすごく軽くなっていることに気がついた。
それから晩御飯の時間に(献立は野菜たっぷりのカレーライスだった)そうか。真琴くんは私のために、あんな話をしたんだ、と美月は思った。
そう思って、美月はにっこりと笑った。
「このカレーライス。すごくおいしい!」と美月はお母さんにそう言った。
すると美月のお母さんは美月を見て、「そう? よかった」と言って、にっこりと幸せそうに笑った。
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