第58話:初夜

………ん、うん? 布団の中で誰かが動いて……


「おはようございます、ソウジ様」


「ぁあ……」


さて、何故ミナが俺と一緒のベッドで寝ていたり、ましてやお互い裸のままなのかというと…ことは昨日の夜に遡る。






風呂から上がって自分の部屋に戻ると、何故かパジャマ姿のミナが少し恥ずかしそうに未使用らしきバスタオルを抱いてうろうろしていたので


「なんでミナが俺の部屋にいるんだよ。別に何も面白いものはないぞ」


「いえ、そういうわけではなくてですね……。その~、昨日ソウジのお家に私宛の荷物が届いたと思うんですけど……」


「ああ、来たぞ。白崎ミナ様に……ほら」


そう言いながら俺は収納ボックスからそれらを出すと


「良かった~。ちゃんと全部受け取ってくださったんですね」


「そりゃあ自分の家に荷物が届けば受け取るだろ。ご丁寧に日付から時間指定、ましてやその時間はティアに頼んで俺を家から出さないようにしてたらな」


「あははははは、バレちゃいました?」


「ティアの件は兎も角、時間指定に関しては送られてくる荷物に書いてあることもあるからすぐに分かるんだよ。それで、何を買ったんだ?」


通販での支払いは全て俺名義のカードを使っているため何を買ったか調べようと思えばすぐに調べられるのだが、出来るだけ見ないようにはしている。まあ明らかに値段がおかしい物があれば確認するけど。


今回は値段が値段だったから確認するか迷ったあげく結局見なかったので実は結構気になってはいる。


「これはですね、新しいベッドとそれ専用の掛布団とかタオルケットなどです。大きさが大きさだったのでかなりの値段がしてしまいましたが大丈夫だったでしょうか? もしあれでしたら私がお支払いしますが」


「別にお金の方は大丈夫だけど、これどこに置くんだ?」


ミナはベッドとか言ってたけど、こんなデカいベッド見たことないぞ。まだ段ボールの中だから正確な大きさは分からないけど。


「もちろんこの部屋に決まってるじゃないですか。その為に買ったんですから」


「………なんで?」


「なんでって、ソウジ様と寝るには狭いからに決まってるじゃないですか」


「……このベッドでも寝れるよね? 君は一体何人で寝ることを想定して言ってるのかな?」


一応この部屋にあるベッドはミナ達が使ってる物と同じやつなので値段や寝心地、そして大きさも決して悪いものではない。大きさに関しては二人で寝ても余裕なくらいだ。


「今のところはソウジ様を含めて四人ですが、このベッドは最高で六人まで寝れるんですよ」


「俺は一体どこからツッコめばいいんだ? そんな大きさのベッドを見つけてきたことか? それともあと二人奥さんが増える可能性か?」


「そんなことより早く開けましょう。ということでソウジ様はベッドの方をお願いします。既に組み立てはされているようですが、箱から出すのが大変そうですので」


つまり俺の魔法で何とかしろと。それは別にいんだけどさ、なんでさっきからずっとソワソワしてるの?


………勘違いだったら嫌だから黙ってよ。


そんなことを考えながらバカデカい段ボールを風魔法で切り、浮遊魔法で中身を出してみたのだが


「デカっ! このベッドに一人で寝るのは寂しいっていうか、落ち着かないだろ」


「いつでも言ってくだされば私が一緒に寝てあげますよ」


「毎日誰かと一緒に寝るっていうのもな……。もう一個自分の部屋を作ろうかな」


別に誰かと一緒に寝るのが嫌だというわけではないが普通に一人で寝たい時もあるだろうし、課題とかがあって寝るのが遅くなった場合起こしたりしたら悪いからな。


だからと言って日本に戻って寝てたら怒られそうだし。


「それでしたらある程度余裕もありますし、今のソウジ様の部屋の隣に小さい部屋を作るのはどうでしょうか?」


「そうだな、同じ列にある予備の部屋を一個潰して少し広めの子供部屋みたいなのを作るか。余ったスペースは倉庫にでもすればいいし」


ということで早速空中にこの城の図面を表示させ、ちょちょいと弄ったあとスマホでそのことを皆に伝え


「子供達はもう寝てるだろうし明日言えばいいや」


「そうだ、出来ればあの子達にもスマホを持たせてあげたいのですが…駄目でしょうか?」


急にどうしたのかと思い、理由を聞ききながら部屋の整理を続け……


「ん~、確かにスマホは持ってると便利なんだけど…どうすっかな~」


「何か心配なことがあるのですか?」


「あれって調べようと思えば何でも調べられるだろ? 俺が過保護過ぎるのかもしれないけど、それを子供達に持たせるっていうのが怖いんだよ」


「あ~、確かにそれはありますね。たまに私ですら怖いと思うことがありますし」


ねえ、なんでミナはベッドの上に乗ってるの? しかも掛布団系は全部ソファーの上だし。


「………そのベッドの上に広げられてるバスタオルは何?」


「こっ、これはですね…その、初めてはシーツが汚れるからとリァーㇴ―――」


最初は顔を赤くしながら恥ずかしそうに、そして徐々に声が小さくなっていき最後の方は何を言っているのか聞こえなかったが、まあ理解はできてしまったわけで


「少し前にも言ったが当分子供を作る気はないんだから、別に今すぐってわけじゃなくてもいいんじゃないか? それに俺もこういうことは初めてだから上手く出来ないだろうし、かなり痛い思いをするかもしれないぞ」


「それでも大丈夫、というかそれがいいです!」


「でも俺と一緒に寝るって駄々こねてた時はここまで積極的じゃなかっただろ。急にどうしたんだよ」


「この二週間ソウジ様が私達の為に頑張っている姿を画面越しとはいえずっと見ていて、その…凄く愛されているなと感じたというか……私も形は違えど同じくらいソウジ様のことを愛してあげたいというか……」


自分の好きな女の子にここまで言われて手を出さないほど出来た人間ではない俺はベッドに乗ったあと、最初は軽いキスをしながらゆっくりと進めていき…パジャマの中に手を入れて………。






ということがあった。


思い出したらミナに抱き着きたくなってきた。


「あん♡ 薄々感じてはいましたが、ソウジ様ってベッドの上ではかなり積極的ですよね」


「積極的かどうかは知らないけど、お互い裸のまま抱き着くこの感じは好き……。なんて言うか独特の温かさとか感触がいい」


「その気持ちも分かりますが、私は今のような状態も含めてソウジ様から求められている時が結構好きですね」


恥ずかしいなら言わなければいいものを、昨日ほどではないが顔を赤くしながら嬉しそうに言ったかと思えば布団の中に潜り込み………。






どこで覚えてきたのかは知らないがミナが布団の中でフ――してきた後、再び抱きしめあったりしながらイチャイチャしているうちに結構時間が経ってしまっていた。その為ミナが着替え終わったの確認した俺は机の前にある椅子を軽く叩きながら


「ミナ、ちょっとここに座ってくれ」


「別にいいですけど、どうしたんですか?」


「まだ左手が上手く使えないからリハビリも兼ねて髪を結んでやるよ。髪型は完全に俺の好みだけど」


そう言いながら一応用意しておいたヘアゴムなどを出し、ネットで調べた結び方を見ながらミナの意見も取り入れつつ髪の毛を弄り続け


「う~ん、やっぱりお団子の部分が不安定ですね。最初はいいかもしれませんが時間が経つにつれて崩れてきちゃいそうです」


「もう面倒だしアメピンに固定魔法でも付与して安定させてみるか?」


「形はしっかり出来ているのに安定しないのが問題なわけですし、いいんじゃないでしょうか」


ということで早速その作戦でやってみると結構簡単にいき


「はい、髪型の名前は分からんけど出来上がり」


「普段は髪を結ばないので新鮮でいいですね。今度は違う髪型もお願いしますね♪」


どうやらこの髪形を気に入ったらしいミナは嬉しそうに鏡を見つめていた。


なお、何時の間にか俺とセッ――した女の子は必ず髪を結んでもらうという暗黙のルールが生まれたとかなんとか。


ちなみに今日のミナの髪型は顔の横にお団子を二つ作ったやつであり、宗司的ポイントは髪の多さを活かし、横の髪を全てお団子に使うのではなくストレートヘア状態も残しているところだ。


つまり、いつも通りのストレートヘアーにプラスしてお団子を二つ作った感じ。もっと分かりやすく言うとシ○ヴィの髪形を参考にしながら俺達二人で前髪や横髪にアレンジを加えたのが今のミナの髪型である。


ちなみに続編に関しては既に購入済みではあるが忙しくて段ボールから出せてすらいない。

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