普通な事

今日は足りない食材を買いにスーパーに寄っていた。

牛乳やら、野菜やらが無くなりつつある。

一人でいた時より少しばかり食材の消費が早い。

作る手間はまんま変わらないが。

重いビニール袋の持ち手が俺の指に食い込む。

買った量は少ないが重い物を買い過ぎた。

もっと計画的に買い物しよ。

いつのまにかアパートの前に着いていた。

今日はハンバーグでも作ろうかな。

俺の部屋のドアを開けるとリビングの方からいい匂いがしてきた。

あれ?

なんか作り置きしてたっけ?

リビングに急ぎ足で向かうと見た目はそこそこなオムライスがあった。

「隆太おかえり」

「た、ただいま。もしかしてこれ、お前が作ったのか」

「うん」

前に料理は出来ないと聞いていたが普通に出来てんじゃん。

俺は手に持っていたビニール袋を冷蔵庫の前に置きオムライスの置かれた机の前に座る。

「さぁ食べてみて。それで感想聞かせて」

机を挟み俺の反対側に座り、子供が100点とったみたいな顔でこちらをみてくる。

俺はケチャップをオムライスに全体的にかける。

そして大きめのスプーンで一口食べた。

「んー」

微妙。

チキンライスがあまり味かしない。

ケチャップだけで味付けした感じだ。

不味い訳では無いが美味しいとは言えない。

「どう?」

傷つかない程度にまだ

「美味しいよ。だけど少し味付けが薄いかな。次作る時は鶏ガラスープとか入れた方が良いかもよ」

「そっかー、頑張ったんだけどな」

えへへ、と笑い少し俯く。

やばい、フォローフォロー!

「でも筋は良いよ。卵もフワフワだし。料理は慣れだからまだまだこれからだよ」

「そっかー、そうだよね!これからだよね!」

パァッーっと顔が明るくなり顔を上げる。

夏樹のこの無邪気な笑顔が俺の何かを変えた気がした。

心の中で鍵穴を合わされた感じ。

何が変わったのか。

俺はオムライスを食べながらそんな事を考えていた。

あっ、そういやこいつ「さん」づけやめたな。


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