第34話 三人の子供
ミクリのベッドに三人の赤ちゃんが並んでいる。
一人は黒髪が薄く生えた天使のような赤ちゃんであった。
もう一人は金髪で目鼻立ちのバランスが整った赤子で、目を開き何かを必死で喋ろうとしいて気持ち悪い赤ちゃんだった。
最後の一人も金髪のつぶらな瞳だったが下まつげが異様に濃く、こちらも産まれたてのくせに立ち上がろうとしたり喋ろうとするのでとても気持ちが悪かった。
俺はそっと黒髪の天使ちゃんを抱っこする。
ミクリは産後に少し眠っただけで身体は回復したらしくすでに起き上がっている。
「ほら、アーサーすごく可愛い子だよ。見てこの黒髪。あと手も足もプニプニで」
そう言いながら天使ちゃんを触るミクリも俺にとっては天使ちゃんだった。
ほんぎゃーと泣き出す赤子はお腹が減ったのかミクリの胸のあたりを手でぶんぶんとしている。ミクリは慈しみに満ちた目で胸を出し、乳首を赤子に吸わせはじめた。俺は、どきどきした。久しぶりに見るミクリのほっそりした身体に早く触れたかったし、子供を産んで少し大きくなった胸を俺も共有したかったのだ。
と、ミクリの後ろからも、ふがふがと声が聞こえてくる。
「そうだミクリ、こいつらは何で赤ん坊になってるんだ?」
そう聞くとミクリはこの変態どもが赤ちゃんとして産まれたいとか言い出して大変だったんだ、と眉をひそめながら説明してくれた。
そう、俺の子供の横に並んでいた赤ん坊二人は、パウロとマラコイの二人だったのだ。
こいつらは20年の間、自分の理想の身体について考え抜き、ミクリが出産が終わったタイミングで普通に肉体を作ろうとしたら断固反対したらしい。
「ちゃんと赤ちゃんとして産まれたい」ともっともらしい説明をする二人に根負けして、ミクリは彼らのイメージを聞いてやり、腹の中に肉体を作り、出産をしてやったんだそうだ。その時間、一人あたりわずか3時間程度だったそうだ。
まずはパウロからだったらしいが、子宮から体外へ出る時にあまりにテンションが上りすぎて「ママの膣に頭から…」などと言った究極変態モードの思考がだだ漏れしミクリは鳥肌が止まらなかったらしい。そしてマラコイは大丈夫だろうと同じように出産してやったら、また膣を通過する時に「ママの膣が何とかかんとか…」という思考が流れ込み、お前もかよとやはり鳥肌が止まらなかったらしい。
ちなみに性別は俺の子供は女子、パウロは女子、マラコイは男子に産まれた。
ミクリは我が娘が乳首を噛みながら寝落ちすると優しく抱きかかえて、子供用に用意したふかふかの布団に寝かしてやる。そして空中にガラス瓶を創り出すと、自分の胸から1滴の乳を絞り、何やら魔法を使って一気に増やした。それを2つ用意すると、ふごふごと喋ろうとしている二人に魔法をかける。
「何の魔法?」
「ん?【成長促進】だけど」
それを聞いた赤子二人は顔が引きつっている。俺とミクリで哺乳瓶のようなものを使ってパウロとマラコイに魔法で増やした乳を飲ませる。ミクリはこの二人に乳首を吸われるなんて死んでも嫌なんだそうだ。
グイグイ飲み、減ったら魔法で増やし、また飲ませた。
俺が産まれた時にかけられた【成長促進】は3ヶ月で6歳程度まで育てられたが、ミクリの怒りがこもった【成長促進】は見る間に二人を成長させていく。歯が生え揃ったあたりでミルクを止め、人を呼び大量の離乳食を持ってきてもらった。二人はすぐに歩けるようになり、トイレに行き、帰ってきて飯を食べ、またトイレに入り、げんなりした表情をしながらも足取りは徐々にしっかりしていった。恐らく明日にはもう6歳ごろの身体にまで育つことだろう。強制的に身体が育つことは痛みを伴うらしく、ぐうぐうと唸りながらも必死で飯をかき込むように食べている。そう、これすげえ腹が減るんだよなあ。
ミクリの部下であるエルフの女に二人を任せて、ようやく部屋で親子水入らずの三人になれた。
まずはこの子の名前を決めなきゃね、ミクリは笑い顔で言う。
そういえば、俺の正式な名前が「アーサー・バラド・アジャナ」でミクリが「ミクリ・バラド・アジャナ」になっている。この子も名前の後ろに国名が付くのである。
ミクリに好きな名前にしていいよ、と言うと少し悩んでマリーでどう?というのでマリーになった。何か丸いからマリーだそうである。後でちゃんとした理由も考えてあげよう。
こうして、「マリー・バラド・アジャナ」はこの世に誕生したのであった。
そして、時代はここから一気に16年を駆け抜ける。
おっと、その前に。
パウロが生まれ変わった女の子は本人の希望で「ハル」という名前になった。産まれてから1日で6歳まで強制的に育て上げられたが、その後は普通に成長させてあげた。17歳になった彼女は見た目はまだ12歳前後の第二次性徴期前の顔と身体つきで、美形のエルフたちがめろめろになる程の美貌を持ち、とんでもないヤリマンに育った。しかし、ヤリマンのくせに処女なのが誇りなのだそうだ。元ゲイの血を濃厚に感じさせる話である。
一方、マラコイが生まれ変わった男子はそのまま「マラコイ」という名前だった。こちらも6歳から普通に成長させたが見た目はまだ12歳で、やはり肉体の成長が遅かった。こちらは性的にはハルに比べるとかなりまともで、どちらかというと戦闘と魔法の訓練を夢中でやっていた。前は熊のようなガチムチ系だった男は髪を肩まで伸ばし、筋肉が引き締まったほっそりとした身体を手に入れている。こちらは性欲が外に出ず、内面に向かっているようで、事あるごとに鏡で自分を見つめている。
どっちにしろ二人とも変態であって、マリーを出来るだけ近づかせたくなかったが、対外的にこの二人は俺の子供と認定されてしまい引き離すことができなかった。そしてマリー自身もお姉ちゃんとお兄ちゃんとして二人に懐き、二人も性欲抜きでマリーを可愛がってくれたのだった。なんせ相当に釘を刺したからね、俺が。
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